歌川広重の有名作品6選!代表作の特徴と魅力をわかりやすく解説

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歌川広重の有名作品

こんにちは。「アートの地図帳」のさとまるです。

江戸時代後期に活躍し、日本の風景画を確立した浮世絵師、歌川広重。美術館の展覧会やテレビの特集などでその名前を聞き、「歌川広重の有名作品にはどんなものがあるんだろう」「代表作の特徴や見どころを知りたい」と気になっているのではないでしょうか。

教科書で見たことがあるあの絵も、実は広重の作品かもしれません。風景の中に雨や雪、そして人々の暮らしを叙情的に描いた彼の作品は、ゴッホをはじめとする海外の画家たちにも多大な影響を与えました。

この記事で分かること
  • 歌川広重が確立した風景画のスタイルと世界的評価の理由
  • 「東海道五拾三次」や「名所江戸百景」など代表的な6つの名作
  • 雨や雪の表現に見る広重特有の叙情的な演出テクニック
  • ゴッホが模写した作品や北斎との作風の違い
目次

歌川広重の有名作品に共通する特徴と魅力

歌川広重の有名作品について深く知る前に、まずは彼がなぜこれほどまでに評価されているのか、その作風の特徴や魅力について整理しておきましょう。単なる観光地のガイドブック的な絵にとどまらない、広重ならではの演出技法が見えてきます。

浮世絵界で確立した風景画のスタイル

歌川広重が登場するまで、浮世絵といえば役者絵や美人画が主流でした。しかし、広重は人々の旅への憧れを背景に、名所絵(風景画)というジャンルを不動のものにしました。彼の描く風景画の最大の特徴は、単に景色を写実的に描くだけでなく、そこに生きる人々の営みや感情を重ね合わせている点にあります。

旅人の話し声や、宿場の賑わい、あるいは孤独な旅路の静けさなど、画面から「音」や「気配」が伝わってくるのが広重作品の面白さです。私自身、広重の絵を見ていると、まるでその時代にタイムスリップして一緒に旅をしているような不思議な感覚になることがあります。見る人の共感を呼ぶこのスタイルこそが、彼が国民的絵師と呼ばれた理由なんですね。

海外でも評価されるヒロシゲブルー

海外でも評価されるヒロシゲブルー

広重の作品を語る上で外せないのが、あの深く美しい「青」です。これはベロ藍(プルシアンブルー)と呼ばれる輸入顔料を使用したもので、空や水面の表現において圧倒的な美しさを放っています。この独特の青色は、海を渡ってヨーロッパの人々を驚かせ、ヒロシゲブルーと称賛されました。

ヒロシゲブルーの特徴

空のグラデーションや水面の深さを表現するために使われた、鮮やかで深みのある藍色(ベロ藍)。木版画の「ぼかし」の技術と組み合わさることで、叙情的な空間を生み出しています。

特に空の上部にこの青を一文字にぼかし入れる手法(一文字ぼかし)は、広重の代名詞とも言えます。この青があるからこそ、画面全体に凛とした空気感や、どこか切ない旅情が生まれているのだと思います。

雨や雪などの気象条件を描いた演出

広重は「雨の広重」「霧の広重」などの異名を持つほど、気象条件の描写に優れていました。晴れた日の観光名所を描くだけでなく、激しい夕立、しんしんと降る雪、朝霧に煙る山々など、刻々と変化する自然の表情を巧みに切り取っています。

これらの天気は、単なる背景ではなく、画面の主役として機能しています。例えば、激しい雨の描写には無数の細い線を用い、視覚的に雨の強さを表現しています。こうした気象の変化を通じて、見る人の感情を揺さぶる演出力こそ、広重の真骨頂と言えるでしょう。

葛飾北斎の富嶽三十六景との比較

よく比較されるのが、同時代に活躍した葛飾北斎です。北斎の『富嶽三十六景』が、幾何学的で大胆な構図を用い、富士山を主役として力強く描いた「動」の作品だとすれば、広重の作品は、季節の移ろいや人々の心情に寄り添った「静」や「叙情」の作品と言えます。

比較項目歌川広重葛飾北斎
代表作東海道五拾三次、名所江戸百景富嶽三十六景
作風叙情的、詩的、静寂構成的、奇抜、ダイナミック
視点旅人の目線、共感演出された劇的な視点

北斎が計算し尽くされたデザイン的な面白さを追求したのに対し、広重は「旅情」や「哀愁」といった情緒的な部分を大切にしました。どちらが優れているということではなく、アプローチの違いを知ることで、それぞれの作品をより深く楽しめるようになります。

歌川広重の有名作品6選と鑑賞ポイント

それでは、数ある作品の中から、特にこれだけは押さえておきたい歌川広重の有名作品を6つ厳選してご紹介します。それぞれの作品が持つ背景や、注目のポイントを解説しますので、鑑賞の参考にしてみてください。

東海道五拾三次の傑作である庄野

歌川広重「庄野白雨」
画像出典:歌川広重「東海道五十三次之内 庄野 白雨」(1833-1834年頃、メトロポリタン美術館)。出典:Wikimedia Commons

広重の出世作にして最高傑作とされる『東海道五拾三次之内』シリーズの中でも、特に有名なのがこの「庄野 白雨」です。現在の三重県鈴鹿市にあたる場所を描いた作品ですが、何と言ってもその凄さは「雨」の表現にあります。

突然の夕立に遭い、坂道を駆け上がる旅人たち。交差する雨の線と、風にしなる竹藪のシルエットが、雨の激しさと風の強さを如実に物語っています。人物の姿勢からも慌ただしさが伝わってきますよね。単なる風景画を超えて、その場の空気や音まで聞こえてきそうな臨場感あふれる一枚です。

蒲原夜之雪に見る静寂と雪の表現

歌川広重「蒲原 夜之雪」
画像出典:歌川広重「東海道五拾三次 蒲原 夜之雪」(1833-1834年頃、国立国会図書館)。出典:Wikimedia Commons

同じく『東海道五拾三次之内』から、「蒲原 夜之雪」です。現在の静岡県静岡市清水区にあたりますが、実際にはこの地域でこれほど深い雪が積もることは珍しいそうです。つまり、これは広重による演出、あるいは想像上の風景である可能性が高いと言われています。

この作品の魅力は、圧倒的な「静寂」です。雪に吸い込まれて音が消えた世界を、雪を踏みしめて歩く村人たちの後ろ姿が強調しています。背景の空と山、そして雪の白さの対比が見事で、しんしんと降る雪の冷たさと美しさを同時に感じさせてくれます。「雨の庄野」と並び称される、「雪の蒲原」としての名作です。

名所江戸百景の大はしあたけの夕立

歌川広重「大はしあたけの夕立」
画像出典:歌川広重「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」(1857年、メトロポリタン美術館)。出典:Wikimedia Commons

晩年の大作『名所江戸百景』シリーズの一つ、「大はしあたけの夕立」。現在の隅田川にかかる新大橋を描いた作品です。この絵の最大の特徴は、空を覆う黒い雨雲と、そこから降り注ぐ激しい雨の描写です。

雨を無数の鋭い線で表現するこの大胆な手法は、当時の西洋絵画にはない斬新なものでした。橋の上で雨を避ける人々がシルエットのように描かれているのも印象的です。遠景が雨で霞んでいる様子(ぼかし)も巧みで、日本の湿潤な気候を見事に表現しています。

ゴッホが愛した亀戸梅屋舗の構図

歌川広重「亀戸梅屋舗」
画像出典:歌川広重「名所江戸百景 亀戸梅屋舗」(1857年、アムステルダム国立美術館)。出典:Wikimedia Commons

こちらも『名所江戸百景』から、「亀戸梅屋舗」です。この作品を有名にしたのは、何と言ってもフィンセント・ファン・ゴッホによる模写でしょう。ゴッホは「ジャポネズリー(日本趣味):梅の開花」として、この作品を油彩で模写しています。

画面の手前に極端に大きく梅の木の幹を配置し、その奥に広がる梅園と人々を描くという、カメラの広角レンズや望遠レンズを駆使したような大胆な構図が特徴です。この「近景を極端に大きく描き、遠近感を強調する」手法は広重が得意としたもので、西洋の画家たちに大きな衝撃を与えました。

亀戸梅屋舗の梅

描かれているのは「臥竜梅」と呼ばれた名木で、龍が地を這うような枝ぶりで有名でした。当時の江戸っ子たちにとっても人気の観光スポットだったそうです。

木曽街道六十九次の洗馬と満月

画像出典:歌川広重「木曽海道六拾九次之内 洗馬」(1835-1838年頃、メトロポリタン美術館)。出典:Wikimedia Commons

『木曽街道六十九次』シリーズにおける最高傑作の一つと言われるのが、「洗馬」です。現在の長野県塩尻市にあたります。夕暮れ時、満月が昇り始めた空の下、奈良井川のほとりを筏(いかだ)乗りや旅人が行き交う様子が描かれています。

この作品の見どころは、寂寥感(せきりょうかん)あふれる情景描写です。薄暗くなり始めた空と、川面に映る月の影、そして風に揺れる柳の木。これらが一体となって、秋の夕暮れの物悲しさと美しさを表現しています。「月夜の風景画」として、広重の叙情性が遺憾なく発揮された一枚です。

鳴門の渦潮を描いた阿波鳴門之風景

歌川広重「阿波 鳴門の風波」
画像出典:歌川広重「六十余州名所図会 阿波 鳴門の風波」(1855年、国立国会図書館)。出典:Wikimedia Commons

『六十余州名所図会』シリーズから、「阿波 鳴門の風波」です。その名の通り、徳島県の鳴門海峡の渦潮をダイナミックに描いた作品です。広重といえば静的な風景画のイメージが強いですが、ここでは荒々しい波の動きを見事に捉えています。

渦巻く波の描写には、北斎の影響も見受けられますが、広重らしい繊細な色使いも健在です。激しい波しぶきと、対照的に穏やかな遠景の島々のコントラストが美しく、自然の力の偉大さを感じさせます。実は広重本人は鳴門を訪れたことはなく、既存の図版などを参考に描いたと言われていますが、その想像力と構成力には驚かされます。

歌川広重の有名作品から感じる情調

ここまで、歌川広重の有名作品について、その特徴や具体的な見どころをご紹介してきました。広重の作品が、単なる風景の記録にとどまらず、雨や雪、月といった自然の移ろいや、そこに息づく人々の感情までをも描き出していることがお分かりいただけたかと思います。

彼の描く「ヒロシゲブルー」の青さや、大胆な構図、そして叙情的な世界観は、時を超えて私たちの心に響きます。もし美術館や画集で広重の作品に出会う機会があれば、ぜひ「描かれた音」や「空気感」に耳を澄ませてみてください。きっと、江戸の旅人たちの息遣いが聞こえてくるはずです。

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