レオナルドダヴィンチ『受胎告知』の技法を徹底解説!

レオナルドダヴィンチ 受胎告知 技法

レオナルド・ダ・ヴィンチの『受胎告知』は、世界で最も知られる宗教画の一つですが、その革新的な技法や作品に隠された数々の謎については、あまり知られていないかもしれません。この記事では、レオナルドダヴィンチが『受胎告知』で用いた独自の技法について、初心者にも分かりやすく解説します。

作品が斜めから見られることを想定していた可能性や、大天使ガブリエル、聖霊を象徴する鳩といったモチーフに込められたアトリビュート(持物)の意味にも迫ります。さらに、フラ・アンジェリコやエルグレコなど、他の巨匠たちが描いた『受胎告知』と比較することで、ダヴィンチの芸術がいかに独創的であったかを浮き彫りにします。作品が現在どこにあるのか、過去に日本で展示された経緯まで、あらゆる疑問にお答えします。

この記事で分かること
  • レオナルド・ダ・ヴィンチが用いた革新的な絵画技法
  • 作品に隠された象徴やアトリビュートの意味
  • 他の画家(フラ・アンジェリコ、エル・グレコ)との比較による特徴
  • 『受胎告知』の鑑賞ポイントや現在の所蔵場所
目次

レオナルドダヴィンチの受胎告知に見る革新的な技法

  • 写実性を追求したレオナルドの技法解説
  • 受胎告知はダヴィンチが斜めから見る前提で描いた?
  • 受胎告知に隠された謎と象徴
  • アトリビュートで読み解く登場人物
  • 受胎告知における大天使ガブリエルの役割
  • 受胎告知は現在どこにある?
  • 受胎告知はダヴィンチ作が日本で展示されたことも

写実性を追求したレオナルドの技法解説

写実性を追求したレオナルドの技法解説
画像出典:レオナルド・ダ・ヴィンチ「受胎告知」(c. 1472–1476年、ウフィツィ美術館蔵)。出典:Wikimedia Commons

レオナルド・ダ・ヴィンチの『受胎告知』が美術史において画期的とされる理由は、その徹底した写実性の追求にあります。彼は、目で見たものをありのままに描くという科学的な探究心を持って制作に臨みました。

この写実性を実現した大きな要因の一つが、油彩技法の採用です。当時のイタリアでは絵具の顔料を卵で溶くテンペラ画が主流でしたが、レオナルドは師であるヴェロッキオの工房に導入されたばかりの油彩を積極的に用いました。油彩は乾燥が遅いため色の修正や重ね塗りが容易で、透明感のある繊細なグラデーション表現が可能です。これにより、衣服の柔らかな質感や光の微妙な変化をリアルに描き出すことができました。

また、背景に描かれた風景には、後に彼が確立する「空気遠近法」の萌芽が見られます。遠くの山や海が青みがかって霞んで見える様子は、空気の層によって光が散乱する現象を鋭い観察眼で捉えた結果です。これにより、二次元の板絵の中に、どこまでも続くかのような雄大な空間の広がりが生まれています。

さらに、前景に描かれた植物や大天使ガブリエルの翼の描写も圧巻です。足元に咲く草花は一つひとつが植物学的な正確さで描かれ、ガブリエルが持つ白ゆりに至っては、花弁の水分を運ぶ花脈まで見て取れます。天使の翼も、従来の装飾的な翼とは異なり、鳥類、おそらくは鷹の翼を解剖学的に研究し、実際に飛翔できそうな構造で描かれています。このように、神聖なテーマを扱いながらも、あくまで自然科学に基づいたリアルな表現にこだわった点が、レオナルドの技法の最大の特徴と言えます。

受胎告知はダヴィンチが斜めから見る前提で描いた?

レオナルドの『受胎告知』には、発表当初からいくつかの技術的な未熟さが指摘されてきました。その中で最も有名なのが、聖母マリアの右腕が不自然に長く見えるという点です。しかし、これは単なるミスではなく、画家の意図的な演出だった可能性が考えられています。

この説は、作品が特定の視点から鑑賞されることを想定して描かれたとする「アナモルフォーズ(歪像画)」の考え方に基づきます。レオナルド研究の第一人者であったカルロ・ペドレッティ氏などが提唱したもので、この絵画は正面からではなく、右斜め下の位置から見上げることで、すべての要素が自然なバランスに見えるように計算されているというものです。

実際に、右斜め下から作品を見ると、長すぎると感じられたマリアの右腕の遠近感が補正され、適切な長さに感じられます。同様に、やや前のめりに見える大天使ガブリエルの姿勢も安定し、書見台や背景の建物の奥行きもより自然に認識できるとされています。

この絵画が元々フィレンツェ近郊のサン・バルトロマイ修道院に飾られていたことを考えると、礼拝堂の高い位置に設置され、信者が下から見上げることを想定して制作された可能性は十分にあります。デビュー作でありながら、鑑賞者の視点まで計算に入れるという、レオナルドの恐るべき空間認識能力と構成力を示す逸話です。ただし、この説はあくまで仮説の一つであり、全ての研究者が同意しているわけではない点には注意が必要です。

受胎告知に隠された謎と象徴

レオナルドの『受胎告知』は、写実的な描写の裏に、多くの象徴や謎が隠されていることでも知られています。彼は、単に聖書の物語を絵解きするのではなく、深い神学的・哲学的メッセージを画面の隅々にまで込めました。

師の作品からの引用

まず、マリアの前にある豪華な書見台に注目すると、その浮き彫り彫刻のデザインが、師であるヴェロッキオが制作したサン・ロレンツォ聖堂の墓碑の装飾と酷似していることが分かります。これは、若きレオナルドが師への敬意を示すと同時に、師の彫刻的表現を絵画の中で超えようとする野心の表れと解釈できます。

伝統への挑戦

一方で、伝統的な図像学への挑戦とも取れる描写も見られます。例えば、大天使ガブリエルが持つ白ゆりです。白ゆりはマリアの純潔を象徴するアトリビュートですが、通常、おしべは描かれないのが通例でした。しかしレオナルドは、ここにおしべをはっきりと描き込んでいます。また、マリアの純潔を象徴する「閉ざされた庭」も、よく見ると左側の石塀が途切れており、奥の風景へと開かれています。これらが何を意図するのかは議論が分かれていますが、レオナルドの合理主義的な精神や、既存の権威にとらわれない姿勢の表れと見る向きもあります。

自然によるもう一つの「受胎告知」

最も深遠な象徴は、後景に描かれた自然そのものにあると言われています。一説では、レオナルドは、大地をマリアの子宮に、水で満たされた港を「受胎」の状態にたとえ、自然の風景を通して「生命の誕生」という普遍的なテーマを表現したとされます。特に、海から突き出た一際高い山は、やがて生まれるキリストの存在を暗示していると考えられているのです。このように、前景の物語と後景の象徴が呼応し、作品に多層的な奥行きを与えています。

アトリビュートで読み解く登場人物

西洋の宗教画を理解する上で欠かせないのが、「アトリビュート」の知識です。アトリビュートとは、特定の聖人や神話の登場人物を識別するために、共に描かれる決まった持ち物や象徴のことを指します。レオナルドの『受胎告知』も、これらのアトリビュートを知ることで、より深く読み解くことができます。

聖母マリアのアトリビュート

聖母マリアのアトリビュート

絵の右側に座る聖母マリアは、伝統に則って赤い衣服と青いマントを身に着けています。赤は「神の愛」や、将来キリストが流す血による「贖罪」を象徴し、青は「天の真実」「純潔」「信仰」を象徴する色とされています。これらの色を纏うことで、彼女が神の計画を受け入れる、信仰深い処女であることを示しています。

また、彼女の前にある書見台と開かれた聖書も重要なアトリビュートです。これは彼女の敬虔さを示すと同時に、旧約聖書の預言者イザヤによる「見よ、乙女が身ごもって男の子を産む」という救世主誕生の預言を読んでいたところ、その預言がまさに実現することを告げられた、という劇的な瞬間を演出しています。

大天使ガブリエルのアトリビュート

大天使ガブリエルのアトリビュート

向かって左側、マリアに跪くのは大天使ガブリエルです。彼の最大のアトリビュートは、左手に持つ「白ゆり」です。前述の通り、これはマリアの純潔を象徴する花であり、「受胎告知」の場面では欠かせないアイテムとなります。ガブリエルがこれを持って現れることで、彼の神聖な使命の内容を視覚的に伝えているのです。

このように、アトリビュートは登場人物の役割や性格を鑑賞者に伝えるための「記号」の役割を果たしています。レオナルドはこれらの伝統的な約束事を踏まえつつ、独自の写実的な表現を加えることで、象徴的でありながらも生々しいリアリティを持つ人物像を創り上げました。

受胎告知における大天使ガブリエルの役割

『受胎告知』の物語において、大天使ガブリエル神の言葉を伝えるメッセンジャーという極めて重要な役割を担っています。彼は聖母マリアのもとに現れ、彼女が聖霊によって神の子を身ごもったことを告げます。レオナルドの作品では、この神聖な使者の姿が、威厳と優しさを兼ね備えた存在として描かれています。

絵の中でガブリエルは、地面に膝まずき、マリアに対して敬意のこもった姿勢を示しています。これは、彼女が将来「神の母」となる存在であることを認めていることを表します。右手は人差し指と中指を立てる祝福のポーズをとっており、これから告げる知らせが神からの祝福であることを示唆しています。

レオナルドが特にこだわったのが、ガブリエルの翼の描写です。彼は、それまでの画家たちが描いてきたような、装飾的で非現実的な翼を良しとしませんでした。そして、実際に鳥を詳細に観察し、その骨格や羽の構造を研究した上で、力強く機能的な翼を描き出しました。この翼には、もし天使が実在するならば、このような翼でなければ空は飛べないはずだ、という彼の科学的な探究心が反映されています。

ただし、若き日の作品であるため、体のサイズに対して翼がやや大きくアンバランスである点や、翼の付け根の位置が解剖学的に不自然である点も指摘されることがあります。しかし、神の使いという超自然的な存在を、あくまで現実的な視点からリアルに描こうとした彼の試みは、ルネサンス絵画における大きな一歩となりました。

レオナルドダヴィンチの受胎告知は現在どこにある?

ウフィツィ美術館

レオナルド・ダ・ヴィンチの傑作『受胎告知』は、イタリア芸術の中心地、フィレンツェに位置する「ウフィツィ美術館」に所蔵されています。世界中から多くの観光客が訪れる、ルネサンス美術の宝庫として名高い美術館です。

この作品は、ウフィツィ美術館の3階(イタリア式2階)にある「レオナルド・ダ・ヴィンチの部屋」(第35展示室)に常設展示されています。同室には、師であるヴェロッキオとの共作とされる『キリストの洗礼』など、彼の初期のキャリアを知る上で重要な作品が共に展示されており、若き日のレオナルドの才能の変遷をたどることができます。

『受胎告知』がウフィツィ美術館の所蔵となったのは1867年のことです。それ以前は、フィレンツェ近郊のモンテ・オリヴェートにあるサン・バルトロマイ修道院の聖具室などに、長年にわたって飾られていました。当初は別の画家の作品と考えられていましたが、19世紀後半の研究によってレオナルドの真筆であることが特定され、現在では彼のプロデビュー作として広く認められています。

ウフィツィ美術館は世界屈指の人気を誇るため、特に観光シーズン中は入場に長い列ができます。そのため、現地でチケットを購入しようとすると数時間待つことも少なくありません。鑑賞を計画する際は、公式サイトから事前にオンラインで日時指定チケットを予約しておくことを強くお勧めします。

受胎告知はダヴィンチ作が日本で展示されたことも

レオナルド・ダ・ヴィンチの『受胎告知』は、その芸術的価値と脆弱さから、通常は門外不出とされる作品です。しかし、過去に一度だけ、奇跡的に日本で公開されたことがあります。

それは2007年に、東京・上野の東京国立博物館で開催された「レオナルド・ダ・ヴィンチ ― 天才の実像」展でのことです。この展覧会は、日本におけるイタリア年を記念した特別企画であり、イタリア政府の全面的な協力のもと、『受胎告知』が史上初めてウフィツィ美術館を離れて海外へ貸し出されるという、歴史的な出来事となりました。

展覧会は大きな話題を呼び、連日多くの人々が詰めかけました。最終的な来場者数は50万人を突破したと記録されています。会場では、聖母マリアの右腕が長く見えるのは「斜めからの鑑賞を想定していた」という説を確かめようと、多くの来場者が作品の右下から見上げる光景が見られました。

この日本での公開は、輸送や警備、温湿度管理など、極めて厳重な体制のもとで実現しました。今後、再びこの作品が日本で展示される可能性は極めて低いと考えられます。2007年の展覧会は、日本の美術ファンにとって、まさに千載一遇の機会だったと言えるでしょう。

比較でわかるレオナルドダヴィンチ受胎告知の技法

  • フラアンジェリコの受胎告知との比較
  • エルグレコの受胎告知との違い
  • 聖霊の象徴として描かれる鳩

フラ・アンジェリコの受胎告知との比較

画像出典:フラ・アンジェリコ「受胎告知」(c. 1426年、プラド美術館蔵)。出典:Wikimedia Commons

レオナルド・ダ・ヴィンチの『受胎告知』の独自性を理解するためには、他の巨匠が描いた同テーマの作品と比較するのが有効です。ここでは、レオナルドより約50年前に活躍した初期ルネサンスの巨匠、フラ・アンジェリコの作品と比較してみましょう。

フラ・アンジェリコは敬虔な修道士でもあった画家で、彼の描く『受胎告知』は、清らかで神聖な雰囲気に満ちています。彼の作品(プラド美術館所蔵版)では、舞台は優美な柱廊に設定され、登場人物は金で装飾された豪華な衣装をまとっています。背景の金や天使の光輪は、中世からの伝統を引き継ぐもので、絵画の神聖さや装飾性を高める役割を果たしています。また、左側にはアダムとイブの「楽園追放」の場面が描かれ、人間の原罪がキリストの誕生によって救済されるという神学的な物語が明確に示されています。

一方、レオナルドの作品は、こうした超自然的な光や金の使用を排し、あくまで自然光のもとでの現実的な情景として描かれています。登場人物の衣服は豪華ですが、それは布地の質感をリアルに表現した結果であり、装飾的な意図は希薄です。背景には具体的な港町の風景が広がり、神学的な物語よりも、目の前で起きている出来事の現実味を重視していることが分かります。

比較項目フラ・アンジェリコ『受胎告知』レオナルド・ダ・ヴィンチ『受胎告知』
制作年代1425年頃1472年頃
表現スタイル初期ルネサンス(ゴシック様式の名残)盛期ルネサンス
雰囲気敬虔、神聖、装飾的静謐、荘厳、写実的
光の表現象徴的な光、金の使用自然光、空気遠近法
背景建築物、楽園(象徴的)現実的な自然風景
主眼神学的な物語の図解科学的観察に基づく現実の再現

このように比較すると、フラ・アンジェリコの作品が信仰の対象としての「聖なる物語」を描いているのに対し、レオナルドの作品は、人間のいる現実世界で起きた「歴史的事件」として描こうとしていることが明らかになります。この科学的・人間的な視点こそが、ルネサンス芸術を新たな段階へと進めたレオナルドの革新性と言えるでしょう。

エルグレコの受胎告知との違い

画像出典:エル・グレコ「受胎告知」(1576年頃、プラド美術館蔵)。出典:Wikimedia Commons

次に、レオナルドの約100年後に活躍したマニエリスムの巨匠、エル・グレコの『受胎告知』(大原美術館所蔵版)と比較してみましょう。両者の違いは、ルネサンスの調和と安定に対し、マニエリスムの情動と劇的表現という、美術様式の違いを明確に示しています。

エル・グレコの作品は、躍動感と神秘性に満ちあふれています。雲の上から降臨する大天使ガブリエル、天から降り注ぐ強い光、そして舞い踊る天使たちなど、画面全体が超自然的なエネルギーで満たされています。人物は現実よりも引き伸ばされた独特のプロポーションで描かれ、燃え立つような色彩と激しい筆致が、鑑賞者の感情に直接訴えかけます。構図も伝統的な左右の配置を逆転させ、向かって左にマリア、右にガブリエルを配している点が特徴的です。

これに対し、レオナルドの作品は、どこまでも静謐で秩序立っています。人物は安定したピラミッド構図の中に収められ、感情表現もマリアの左手の仕草など、抑制の効いた形で示されます。色彩は穏やかで、全体の調和が重んじられています。

比較項目レオナルド・ダ・ヴィンチ『受胎告知』エル・グレコ『受胎告知』
制作年代1472年頃1590〜1603年頃
表現スタイル盛期ルネサンスマニエリスム
雰囲気静謐、荘厳、写実的劇的、神秘的、情動的
光の表現自然光、科学的な陰影超自然的な光、劇的なコントラスト
構図安定的、ピラミッド構図動的、伝統とは逆の人物配置
主眼科学的観察に基づく現実の再現精神性や信仰心の劇的な表現

要するに、エル・グレコが描いたのは、観る者の信仰心を激しく揺さぶる「奇跡の瞬間」です。一方、レオナルドが描いたのは、知的に理解し、観察することのできる「荘厳な出来事」なのです。レオナルドが追求した客観的で科学的な写実性は、エル・グレコのような後代の画家たちが目指した主観的で精神的な表現とは、全く異なる方向性を持っていたことが分かります。

聖霊の象徴として描かれる鳩

聖霊の象徴として描かれる鳩
イメージ画像です

多くの画家が描いた『受胎告知』の絵画において、頻繁に登場する重要なモチーフが「鳩」です。鳩はキリスト教美術において「聖霊」を象徴するアトリビュートであり、マリアが処女のまま懐妊したのが、人の力によるのではなく、神の霊である聖霊の働きによることを示すために描かれます。通常、鳩は天から光と共に降りてきて、マリアの頭上や胸元に描かれることが多くあります。

しかし、レオナルド・ダ・ヴィンチの『受胎告知』を注意深く見ても、この聖霊の鳩はどこにも描かれていません。同様に、天からの奇跡的な光線や、神の姿といった、他の作品で定番となっている超自然的な要素も一切排除されています。

これは、レオナルドの徹底したリアリズム精神の表れと考えられます。彼は自身の絵画論の中で、画家は自然の観察者であるべきだと説き、実際に目に見えないものを描くことに否定的でした。たとえそれが神聖な物語を描く宗教画であっても、彼の科学的な探究心は、非現実的な表現を描くことを許さなかったのです。

このため、レオナルドの作品では、マリアの受胎が聖霊によるものであることは、鑑賞者の知識に委ねられています。彼は超自然的なシンボルに頼る代わりに、登場人物の厳粛な表情や荘厳な全体の雰囲気によって、この出来事が神聖なものであることを伝えようとしました。目に見えるものだけを信じ、それを究極までリアルに描くという姿勢は、レオナルドの芸術と科学を貫く基本理念であり、この『受胎告知』は、その理念が表明された最初の傑作と言えるでしょう。

総括:レオナルドダヴィンチ受胎告知の技法の独自性

この記事で解説した、レオナルド・ダ・ヴィンチの『受胎告知』に見られる技法や特徴の要点を以下にまとめます。

  • レオナルド・ダ・ヴィンチの『受胎告知』は20代前半のデビュー作
  • 主な技法は当時最新だった油彩を用いている
  • 遠くの風景が霞む「空気遠近法」の初期の試みが見られる
  • 植物や翼など細部まで徹底した写実主義を貫いた
  • 大天使ガブリエルの翼は実際の鳥を参考に描かれている
  • 聖母マリアの右腕は斜め下からの鑑賞を想定した可能性がある
  • この技法はアナモルフォーズ(歪像画)と呼ばれる
  • 他の画家が描く聖霊の鳩や光など超自然的な表現を排除した
  • 背景の風景にも象徴的な意味が込められている
  • 構図は伝統に倣いつつも独自の静謐さを表現している
  • フラ・アンジェリコの敬虔な作風とは対照的である
  • エル・グレコの劇的な表現とも一線を画す
  • 白ゆりのおしべを描くなど従来の約束事への挑戦が見られる
  • 現在はフィレンツェのウフィツィ美術館で鑑賞できる
  • ダヴィンチの科学的探究心と芸術性が融合した傑作である
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