ピカソの「ゲルニカ」がなぜ群馬県立近代美術館にあるのか?その謎を解説

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群馬県立近代美術館 ゲルニカ なぜ

「群馬県立近代美術館にピカソのゲルニカがある」と聞いて、「なぜ?」と疑問に思う方も多いでしょう。

この記事では、まずその疑問にお答えします。

群馬にあるのは油彩画の本物ではなく、ピカソ監修のもと制作されたタペストリー(織物)です。世界中には他にアメリカ(国連本部)とフランスの全3か所に存在ます。では、本物はどこにあるのでしょうか。

この記事では、群馬県立近代美術館がなぜこのレプリカとも言える複製画を購入したのか、その理由を深く掘り下げます。あわせて、ゲルニカが伝えたいことについても解説し、日本国内での他の展示情報(過去の大分での公開など)にも触れます。

さらに、群馬県立近代美術館での最新展示スケジュール(2024年・2025年の情報を含む)や、群馬県立近代美術館へのアクセス方法まで、あなたの「なぜ?」を解消する情報を詳しくお届けします。

この記事で分かること
  • 群馬県立近代美術館がゲルニカのタペストリーを所蔵する理由
  • 油彩画の「本物」とタペストリー版の「複製画」の違い
  • 世界に3点しかないタペストリーの他の所蔵場所
  • 群馬県立近代美術館での最新の展示情報とアクセス方法
目次

なぜ群馬県立近代美術館にピカソの「ゲルニカ」が?

  • ゲルニカのレプリカ複製画を購入した経緯
  • ピカソ作ゲルニカの本物はどこにある?
  • ゲルニカのタペストリーはどこにあるのか
  • 国連本部に飾られるタペストリー
  • ゲルニカが伝えたいこと。背景を解説

ゲルニカのタペストリー版を購入した経緯

ゲルニカのタペストリー版を購入した経緯
群馬県立近代美術館

群馬県立近代美術館がピカソの「ゲルニカ」タペストリー版を所蔵するに至った背景には、当時の館長の明確な意図がありました。

購入が決定されたのは1996年のことです。当時の館長が、美術館の他の所蔵品と組み合わせ、「戦争」をテーマにした展示が可能になると考え、購入を決断しました。

当時、タペストリーは所詮レプリカ(複製画)であると考える向きが多く、なかなか買い手がつかなかったと言われています。購入金額は9600万円でしたが、現在のその価値を考えれば、先見の明があったと言えるでしょう。

このように、群馬県立近代美術館の「ゲルニカ」は、単なる名画の複製としてではなく、美術館のコレクションテーマを深める重要な作品として収集されたのです。

ゲルニカの本物はどこにある?

ゲルニカの本物はどこにある?
画像出典:パブロ・ピカソ「ゲルニカ」(2012年、ソフィア王妃芸術センター)。出典:Wikimedia Commons

多くの人が疑問に思う「ゲルニカの本物(油彩画の原画)はどこにあるのか」という点ですが、原画はスペインの首都マドリードにあります。

所蔵しているのは、「ソフィア王妃芸術センター(ソフィア国立美術館)」です。ここは20世紀の近現代美術コレクションを中心とするスペインの主要な美術館の一つです。

「ゲルニカ」は、その主題の重要性と作品の圧倒的な価値から、スペインの宝として厳重に管理されています。過去にはパリ万博での展示後、ピカソの意向でフランコ独裁政権下のスペインには返還されず、ニューヨーク近代美術館(MOMA)などで保管されていました。

スペインに民主主義が回復した後、1981年にスペインに戻り、現在はソフィア王妃芸術センターの顔として常設展示されています。なお、作品保護の観点から、この原画がスペイン国外へ貸し出されることは原則としてありません。

ゲルニカのタペストリーはどこにあるのか?

群馬県立近代美術館が所蔵するタペストリー版「ゲルニカ」は、単なる複製とは一線を画す「真正の作品」とされています。これは、ピカソ本人の監修のもと、フランスの工房で制作されたためです。

このピカソが認めたタペストリー版「ゲルニカ」は、世界にわずか3点しか存在しません。

1点目は、フランスのウンターリンデン美術館にあります。

2点目は、アメリカ・ニューヨークの国連本部に飾られています。

ゲルニカのタペストリーはどこにあるのか?
画像出典:Yann (talk)「United Nations Headquarters, Geneva.jpg」(2011年、国際連合ジュネーブ事務局)。出典:Wikimedia Commons

そして3点目が、ここ日本の群馬県立近代美術館に所蔵されています。

このように、世界でも錚々たる場所と並んで群馬県に所蔵されている事実が、この作品の価値を物語っています。

国連本部のタペストリーが一時撤去されていた

前述の通り、世界に3点しかないタペストリー版「ゲルニカ」のうちの1点は、ニューヨークの国連本部にあります。

この作品は、安全保障理事会議場前の目立つ場所に飾られてきました。国連本部に設置されたのは1985年のことで、所有者であるロックフェラー家からの長期貸与という形です。反戦の象徴として、世界の平和と安全について議論する場にふさわしい作品として知られてきました。

2021年2月、所有者であるロックフェラー家の要請により一時撤去され、その行方が注目されました。しかし、撤去の理由は清掃と保存処理のためであったと説明されています。

その後、2022年2月には再び国連本部の元の場所に戻され、現在も国際社会の平和を見守る象徴として存在しています。

ゲルニカが伝えたいこと。背景を解説

画像出典:パブロ・ピカソ(1957年、Archivo Revista Vea y Lea)。出典:Wikimedia Commons

ピカソの「ゲルニカ」は、単なる芸術作品ではなく、強力な政治的・社会的メッセージを持つ、20世紀を代表する記念碑的作品です。

この作品が描かれた直接的なきっかけは、1937年4月26日に起きたスペイン内戦中の出来事です。スペイン北部のバスク地方の古都ゲルニカが、ナチス・ドイツ空軍によって無差別爆撃を受けました。これは、フランコ将軍を支援するヒトラーによる、一般市民を対象とした世界初とも言われる大規模な都市無差別爆撃でした。

当時パリにいたピカソは、この非人道的な蛮行に激しく憤慨します。同年開催のパリ万博スペイン共和国館の壁画制作を依頼されていたピカソは、このゲルニカの惨劇を主題に選び、わずかひと月ほどでこの大作を完成させました。

絵には、苦しみもだえる人々、絶叫する母親、傷ついた馬や牛などが、モノクローム(白黒灰色)の画面に寓意的に描かれています。これは、戦争の悲惨さ、非人間性、そして罪のない人々が受ける苦痛に対するピカソの強烈な抗議であり、現代に至るまで続く「戦争批判と平和への希求」の普遍的なメッセージとなっています。

なぜ注目?群馬県立近代美術館のピカソ「ゲルニカ」の価値

  • ゲルニカの展示は日本で見られる?
  • ゲルニカのタペストリーが大分でも公開
  • 群馬県立近代美術館ゲルニカ展示2024 2025年
  • 群馬県立近代美術館へのアクセス方法
  • 群馬県立近代美術館ゲルニカはなぜ貴重か

ゲルニカの展示は日本で見られる?

ピカソ作「ゲルニカ」の展示を日本で見たいと考えた場合、いくつかの選択肢がありますが、それぞれ性質が異なります。

油彩画の「本物」

前述の通り、ピカソが描いた油彩画の原画(本物)は、スペイン・マドリードのソフィア王妃芸術センターに所蔵されており、原則として国外への貸し出しは行われません。したがって、日本国内で本物を見ることはできません。

タペストリー版

群馬県立近代美術館が所蔵するタペストリー版は、ピカソ監修のもと制作された「真正の作品」です。これは常設展示ではなく、年に一度の期間限定で公開されます。

陶板複製画

徳島県鳴門市にある大塚国際美術館では、「ゲルニカ」を原寸大の陶板で精巧に再現した複製画を常時展示しています。これはピカソの筆致や大きさを体感できる貴重な展示であり、写真撮影も可能です。

このように、日本国内で「ゲルニカ」に触れる場合、ピカソ監修のタペストリー(群馬)か、精巧な原寸大の陶板複製(徳島)が主な選択肢となります。

ゲルニカのタペストリーが大分でも公開されていた

群馬県立近代美術館が所蔵するタペストリー版「ゲルニカ」は、非常に貴重な作品ですが、他の美術館へ貸し出されることもあります。

最近の例では、2025年6月9日から6月22日までの期間、大分市の大分県立美術館(OPAM)で開催された企画展「LINKS―大分と、世界と。」の中で特別に公開されました。

これは、群馬県立近代美術館の所蔵品が館外で展示された珍しい機会です。タペストリー版「ゲルニカ」は、その大きさ(縦3.28メートル、横6.8メートル)と貴重さから移動や展示が容易ではありませんが、このような企画展を通じて、群馬県外の人々にも鑑賞の機会が提供されることがあります。

ただし、こうした貸出展示は不定期であり、基本的には所蔵館である群馬県立近代美術館での公開を待つことになります。

群馬県立近代美術館のゲルニカの展示(2024年と2025年)

群馬県立近代美術館が所蔵するタペストリー版「ゲルニカ」は、常設展示されていません。

これは、タペストリーがウールや綿といった素材で織られており、光や環境の変化によって劣化しやすいためです。作品を良好な状態で未来へ残すため、展示期間は年に一度、夏期(7月~8月頃)の約1か月半程度に限定されています。

過去の展示スケジュールは以下の通りです。

  • 2024年:7月13日(土)から8月25日(日)
  • 2025年:7月19日(土)から8月31日(日)

現在(2025年10月)は、2025年の夏の展示期間が終了しているため、鑑賞することはできません。

また、群馬県立近代美術館は、設備更新工事のために2025年12月17日から2026年3月31日までの期間、全館休館することが発表されています。

このため、次回のタペストリー版「ゲルニカ」の公開は、休館明けの2026年4月以降、例年通りであれば2026年の夏頃になる可能性が高いと考えられます。

訪問を計画される際は、必ず事前に群馬県立近代美術館の公式サイトで最新の展示スケジュールや開館情報を確認してください。

群馬県立近代美術館へのアクセス方法

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