モナリザの何がすごい?謎多き名画の魅力を徹底解説

世界で最も有名な絵画、モナリザ。その魅力や特徴はどこにあるのでしょうか。

多くの謎に包まれ、作者レオナルド・ダヴィンチの意図は今も議論を呼んでいます。なぜ有名になったのか、その理由には盗まれたモナリザ事件も関係しています。

また、モナリザは怖いという印象や、実は美人ではないとされる説、眉毛がない理由、そして描かれたイボの正体まで、様々な側面が語られます。

驚くべき値段がつけられるこの名画がどこにある美術館で見られるのかも含め、この記事では「モナリザの何がすごいのか」という疑問に、あらゆる角度から迫ります。

この記事で分かること
  • ​モナリザが美術史において「すごい」とされる理由
  • ​作品の知名度を高めた歴史的な事件の真相
  • ​表情や細部に隠された数々の謎と科学的な分析
  • ​モナリザを鑑賞できる美術館と作品の現在の価値
目次

モナリザの何がすごい?作品の魅力を解説

  • 魅力 特徴はスフマート技法にあり
  • 作者 レオナルド・ダヴィンチの革新性
  • なぜ有名?世界的な知名度の秘密
  • 美人?眉毛がない理由を解明
  • 左目のイボは生活習慣病の印?

魅力と特徴はスフマート技法にあり

魅力と特徴はスフマート技法にあり
画像出典:レオナルド・ダ・ヴィンチ「モナ・リザ 顔の部分詳細」(制作年 1503–1506年頃、ルーヴル美術館)。出典:Wikimedia Commons

モナリザの最大の魅力であり、技術的な特徴として挙げられるのが「スフマート」と呼ばれる絵画技法です。これは、レオナルド・ダヴィンチが考案したとされる革新的な表現方法でした。

当時の肖像画は、対象の輪郭を線でくっきりと描くのが一般的でした。しかし、レオナルドはスフマートを用いることで、輪郭線を意図的にぼかし、まるで煙や蒸気の中にいるかのように、色彩を微妙に変化させながら描いています。この技法によって、肌の柔らかさや光と影の繊細な移ろいが表現され、これまでにない自然で生き生きとした人物像が生まれました。

モナ・リザ(口の部分詳細)
画像出典:レオナルド・ダ・ヴィンチ「モナ・リザ(口の部分詳細)」 (制作年 1503–1506年頃、ルーヴル美術館)。出典:Wikimedia Commons

例えば、モナリザの口元目元を詳しく見ると、微笑んでいるのか、いないのか、はっきりとしない不思議な表情に見えます。これはスフマートによって口角や目じりの輪郭が曖昧にされているためで、見る人の感情や角度によって表情が変化するように感じさせるのです。この捉えどころのない神秘的な雰囲気が、モナリザの大きな魅力となっています。

作者であるレオナルド・ダヴィンチの革新性

モナリザのすごさは、作者であるレオナルド・ダヴィンチ自身の多才さと探求心に深く根差しています。彼は画家であると同時に、科学者、発明家、解剖学者、数学者など、様々な分野で類まれなる才能を発揮した「万能の天才」でした。

レオナルドの科学的な知見は、モナリザの制作にも遺憾なく発揮されています。特に、彼は人体の構造を理解するために、病院で数多くの解剖を行っていました。この解剖学の知識があったからこそ、顔の筋肉の構造を正確に把握し、人間が微笑むときの筋肉の動きをリアルに再現できたのです。モナリザの謎めいた微笑みは、単なる画家の感性だけでなく、科学的な裏付けに基づいた表現と言えます。

また、当時の肖像画が横顔で描かれるのが主流だったのに対し、レオナルドはモナリザを正面向きに近い角度で描きました。組まれた手まで構図に入れることで、モデルの人間性や親しみやすさを引き出し、鑑賞者との心理的な距離を縮める効果を生んでいます。このように、芸術と科学を融合させ、従来の常識を打ち破る革新的な試みこそが、レオナルド・ダヴィンチの真骨頂であり、モナリザを単なる肖像画以上の作品に押し上げているのです。

なぜ有名?世界的な知名度の秘密

モナリザが今日のように世界的な知名度を獲得した背景には、作品の芸術的価値だけではない、ある決定的な出来事がありました。それは、1911年にルーブル美術館で発生した盗難事件です。

もともとモナリザは専門家の間で評価されていましたが、一般の来館者から絶大な注目を集める作品ではありませんでした。しかし、この前代未聞の事件が世界中で大々的に報じられると、モナリザの名前は一躍、世間の知るところとなります。新聞は連日この話題を取り上げ、人々は「盗まれた傑作」に強い関心を寄せるようになりました。

犯人は美術館の元職員だったイタリア人のヴィンチェンツォ・ペルージャで、彼は「イタリアの至宝はイタリアにあるべきだ」という愛国心から犯行に及んだとされています。約2年後に絵画は無事フィレンツェで発見され、ルーブル美術館に返還されましたが、この一連の騒動が結果的にモナリザの神秘性を高め、一種のポップアイコンへと押し上げるきっかけになったのです。返還後、ルーブル美術館にはモナリザを一目見ようと、以前とは比べ物にならないほど多くの人々が詰めかけました。この事件がなければ、モナリザの知名度は現在とは全く違ったものになっていたかもしれません。

美人?眉毛がない理由を解明

モナリザを見て多くの人が抱く疑問の一つに、「なぜ眉毛がないのか?」という点があります。この眉毛の不在が、彼女の表情をどこか人間離れした、ミステリアスなものに感じさせる要因にもなっています。

長年、これは当時のフィレンツェの女性たちの間で、眉を剃る習慣があったためだという説や、レオナルドが意図的に描かなかったという説が唱えられてきました。しかし、近年の研究によって、新たな可能性が示唆されています。フランスの研究者が超高解像度カメラで作品を分析したところ、もともと眉毛やまつ毛が描かれていた痕跡が発見されたのです。

では、なぜ消えてしまったのでしょうか。最も有力な説は、500年以上の長い年月の間に、絵画の修復作業やクリーニングが繰り返される過程で、顔料が剥がれ落ちてしまった、あるいは溶剤によって消えてしまったというものです。16世紀の美術家ヴァザーリが「モナリザの眉毛の描写は実に見事だ」と記録を残していることからも、制作当時は眉毛が存在した可能性は高いと考えられます。

したがって、眉毛がないのは意図的な表現ではなく、時間の経過と後世の介入による偶然の産物である可能性が高いと言えます。結果的に、この偶然がモナリザの謎を一層深めることになりました。

左目のイボは生活習慣病の印?

左目のイボは生活習慣病の印?
画像出典:レオナルド・ダ・ヴィンチ「モナ・リザ 目の部分詳細」(1503–1506年頃、ルーヴル美術館)。出典:Wikimedia Commons

モナリザの顔を細部まで観察すると、左目の目頭あたりに黄色みがかった小さな膨らみがあることがわかります。これは、モデルの健康状態を示す手がかりではないかという、医学的な見地からの興味深い説が存在します。

この膨らみは、医学的には「眼瞼黄色腫(がんけんおうしょくしゅ)」と呼ばれる症状の特徴と一致するという指摘があります。眼瞼黄色腫は、皮膚の下にコレステロールが溜まることで生じる良性の腫瘍です。これは、血中のコレステロール値が高い状態、つまり高脂血症の兆候である場合があります。

もしこの説が正しければ、モナリザのモデルとされるリザ・デル・ジョコンド夫人は、当時まだ20代後半であったにもかかわらず、食生活などが原因で高脂血症を患っていた可能性が考えられます。ルネサンス期の貴族の食生活は、肉類や脂肪分が中心であったとされており、この推測には一定の信憑性があるかもしれません。レオナルド・ダヴィンチの驚異的な観察眼が、モデルの健康状態までをも正確に捉えていたとすれば、彼の写実表現の徹底ぶりを物語るエピソードと言えるでしょう。

モナリザの何がすごいのかは謎の多さにもある

  • 解明されていないモナリザの謎
  • モナリザが怖いといわれる理由
  • モナリザ事件で作品が盗まれた過去
  • 驚きの値段!その価値は?
  • どこにある?鑑賞できる美術館

解明されていないモナリザの謎

モナリザが人々を魅了してやまない最大の理由は、その芸術性とともに、数多くの未解明の謎に包まれている点にあります。500年以上もの間、専門家たちが研究を重ねても、いまだに明確な答えが出ていない謎がいくつも存在するのです。

未完成だったという説

レオナルドはモナリザの制作に長年を費やし、亡くなるまで手元に置いて加筆を続けたとされています。しかし、背景の一部や左手の指の描写など、細部には未完成に見える箇所があることから、「永遠に完成しない理想の女性像を追い求めていたのではないか」という説があります。

もう一枚のモナリザ

ルーブル版とは別に、レオナルド自身が描いたとされるもう一枚の若いモナリザ、《アイルワースのモナリザ》が存在します。これが依頼主のために描かれた本来の肖像画で、ルーブル版はレオナルドが自身の探求のために描き続けた作品だという説も唱えられており、真贋を巡る議論が続いています。

もう一枚のモナリザ
画像出典:作者不詳(レオナルド・ダ・ヴィンチ工房か、その影響下)「アイルワース版モナ・リザ」(16世紀初頭、スイスの私人コレクション)。出典:Wikimedia Commons

左右非対称の背景

モナリザの背後に広がる風景は、よく見ると左右で地平線の高さが異なり、つながっていないことがわかります。これはレオナルドが意図的に描いたものとされ、現実には存在しない理想の風景であるという説や、異なる視点から見た風景を組み合わせたという説など、様々な解釈を生んでいます。

これらの謎は、それぞれに仮説が立てられていますが、決定的な証拠は見つかっていません。解き明かせない謎があるからこそ、私たちはモナリザに想像力をかき立てられ、何度でもその前に立ちたくなるのかもしれません。

モナリザが怖いといわれる理由

モナリザの微笑みは「神秘的」と評される一方で、一部の人々からは「怖い」「不気味だ」と感じられることがあります。このような印象を与える背景には、いくつかの視覚的な要因が関係していると考えられます。

最も大きな要因は、「モナリザ効果」として知られる現象です。これは、絵の正面から左右に移動しても、モナリザの視線が常に自分を追いかけてくるように感じる効果のことを指します。鑑賞者はどこにいても見つめられているような感覚に陥り、これが時に不気味さや怖さにつながることがあります。

また、前述の通り、スフマート技法によってぼかされた口元や目元は、表情を曖昧にします。微笑んでいるようにも、冷ややかに見下しているようにも、あるいは何かを企んでいるようにも解釈できるため、見る人の心理状態によって印象が大きく変わります。不安な気持ちで見れば不吉な表情に見え、これが怖いという感覚を増幅させるのです。

さらに、一般的な肖像画では目に光の反射(ハイライト)を描き込むことで生命感を与えますが、モナリザにはそれがほとんど見られません。ハイライトのない瞳は、どこか人間離れした印象を与え、感情の読めないミステリアスな雰囲気を強調しています。これらの要素が複合的に作用することで、モナリザは単なる美しい肖像画には収まらない、見る者を不安にさせるような不思議な迫力を放っているのです。

モナリザ事件で作品が盗まれた過去

前述の通り、モナリザの知名度を飛躍的に高めたのは1911年の盗難事件ですが、この「モナリザ事件」は、単に作品が有名になったというだけではなく、美術界や社会に大きな影響を与えました。

事件の経緯

1911年8月21日、ルーブル美術館が休館日の月曜日に、作品は展示場所から忽然と姿を消しました。当初、美術館側は写真撮影のために移動されたものと考えていましたが、翌日に盗難が発覚。フランス政府を揺るがす大事件となり、国境が封鎖され、大々的な捜査が開始されました。しかし、捜査は難航し、一時は詩人のアポリネールや画家のピカソまでが容疑者として疑われる事態にまで発展します。

犯人と動機

約2年後、犯人であるヴィンチェンツォ・ペルージャがイタリアのフィレンツェで逮捕されました。彼はルーブル美術館で保護ガラスの取り付け作業をしていた元職員で、休館日に作業員を装って館内に忍び込み、絵画を上着の下に隠して運び出したのです。彼の動機は、ナポレオンによって略奪されたイタリアの美術品を取り戻すという、歪んだ愛国心によるものでした。

事件がもたらした影響

この事件は、美術館の警備体制の甘さを世界に露呈し、各国の美術館がセキュリティを大幅に強化するきっかけとなりました。また、事件の報道を通じてモナリザのイメージが世界中に拡散した結果、マルセル・デュシャンがモナリザの複製にひげを描き加えた《L.H.O.O.Q.》を発表するなど、数多くのパロディやオマージュ作品が生まれる土壌を作りました。事件は、モナリザを単なるルネサンスの傑作から、誰もが知る文化的な「象徴」へと変貌させたのです。

画像出典:マルセル・デュシャン(Marcel Duchamp)「L.H.O.O.Q.(口ひげとあごひげを加えたモナ・リザのパロディ)」 (1919年、出典:Wikimedia Commons)。出典:Wikimedia Commons

驚きの値段!その価値は?

モナリザは世界で最も価値のある絵画と言われていますが、その値段を正確に算出することは事実上不可能です。フランスの法律により国の遺産として保護されており、売買されることは決してないため、市場価格は存在しません。

しかし、その価値を保険金額から推定することは可能です。1962年にアメリカで展示された際、1億ドルという当時史上最高額の保険がかけられました。現在の貨幣価値に換算すると、インフレーションを考慮して約10億ドル以上日本円にして1500億円を超えるとも言われています。2020年の専門家による査定では、最低でも約8億6000万ドルになると推定されており、その価値は計り知れません。

この驚異的な価値は、単にレオナルド・ダヴィンチの作品であるという理由だけではありません。美術史における革新性、数々の謎、盗難事件をはじめとするドラマチックな歴史、そして世界中の人々を惹きつけてきた文化的影響力など、有形無形の価値が積み重なった結果です。

もし仮にオークションに出品されるようなことがあれば、史上最高額をはるかに更新することは間違いないでしょう。しかし、モナリザは一国の所有物を超えた、全人類の共有財産と見なされており、その価値は値段で測れるものではない、まさにプライスレスな宝なのです。

どこにある?鑑賞できる美術館

モナリザは、フランスのパリにあるルーブル美術館に所蔵されており、常設展示されています。16世紀にレオナルド・ダヴィンチ自身がフランス王フランソワ1世の宮廷に持ち込んで以来、ごくわずかな例外を除いてフランスの地を離れたことはありません。

ルーブル美術館の公式サイトへ

ルーブル美術館は、古代から19世紀までの幅広い美術品を収蔵する世界最大級の美術館であり、その中でもモナリザは最も人気のある作品です。年間800万人以上が訪れると言われ、館内にはモナリザの展示室への案内表示が至る所に設置されています。

作品が展示されているのは、「サル・デ・ゼタ(国家の間)」と呼ばれる、館内で最も広い展示室です。数々の傑作が並ぶ中でも、モナリザはひときわ特別な扱いで展示されています。作品保護のため、温度と湿度が管理された防弾ガラスのケースに収められ、専用の展示壁の前に設置されています。多くの鑑賞者が一度に押し寄せるため、絵画の前にはロープが張られ、間近でじっくりと鑑賞するには順番を待つ必要があります。

過去にはアメリカや日本で展示されたこともありましたが、作品の脆弱性を考慮すると、今後ルーブル美術館から貸し出される可能性は極めて低いと考えられています。このパリでしか見られないという希少性もまた、モナリザの価値を高める一因となっています。

まとめ:モナリザ 何がすごいのかを再確認

この記事では、モナリザがなぜこれほどまでに有名で、「すごい」と言われるのか、その理由を多角的に解説しました。最後に、重要なポイントを振り返ってみましょう。

  • モナリザはレオナルド・ダヴィンチによるルネサンス期の傑作
  • 輪郭をぼかす「スフマート」技法が最大の特徴
  • スフマートが謎めいた表情とリアリティを生み出している
  • 作者レオナルドの解剖学など科学的知見が活かされている
  • 従来の肖像画の常識を打ち破る構図も革新的だった
  • 1911年の盗難事件をきっかけに世界的な知名度を獲得
  • 事件によって文化的なアイコンとしての地位を確立した
  • 眉毛がないのは修復で消えたという説が有力
  • 左目のイボはモデルの健康状態を示すという医学的指摘もある
  • 未完成説や別バージョン説など数多くの謎が残っている
  • 左右非対称の背景もミステリーの一つ
  • 視線が追ってくる「モナリザ効果」が怖いという印象を与える
  • 推定価値は1000億円を超え、値段がつけられない人類の宝
  • フランス・パリのルーブル美術館で常設展示されている
  • 今後、ルーブル美術館を離れる可能性は極めて低い
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