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国立西洋美術館のモネは本物?所蔵の理由と鑑賞ガイド

「国立西洋美術館にあるモネの絵画は、本当に本物なのだろうか?」 このように考えたことはありませんか。世界的に有名な画家の作品だからこそ、レプリカや複製品が展示されているのではないかと疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、国立西洋美術館に常設されているモネの作品は、すべて本物です。この記事では、なぜ同館にモネの真筆が数多く所蔵されているのか、その背景にある実業家・松方幸次郎とモネの物語、そして松方コレクションと国立西洋美術館の設立経緯を詳しく解説します。

さらに、国立西洋美術館で鑑賞できる常設作品の具体的なラインナップや、気になる入館料、便利なアクセス方法まで、鑑賞の計画に役立つ情報を網羅しました。また、視点を広げ、東京はもちろん、京都や大阪、名古屋など、日本全国にあるモネの作品を収蔵する美術館の一覧も紹介します。

この記事を読めば、あなたの美術鑑賞が、より深く、充実したものになるはずです。

この記事で分かること
  • 国立西洋美術館のモネ作品が本物である理由がわかる
  • 常設作品の詳細と美術館の利用方法がわかる
  • 創設の背景にある松方幸次郎の物語がわかる
  • 日本全国でモネ作品を鑑賞できる美術館がわかる
目次

国立西洋美術館のモネは本物?その疑問に答えます

  • 国立西洋美術館のモネ、常設展示は全て本物
  • 所蔵の核、松方コレクションと国立西洋美術館
  • 実業家・松方幸次郎とモネの深い交流
  • 国立西洋美術館の常設作品ラインナップ
  • 国立西洋美術館の入館料とアクセス情報

国立西洋美術館のモネ、常設展示は全て本物

結論から申し上げますと、国立西洋美術館の常設展で鑑賞できるクロード・モネの絵画は、すべてが本物です。これらはレプリカや模写ではなく、モネ自身が描いた真筆の油彩画です。

2025年7月現在は所蔵されている19作品のうち、9作品が展示されています。

詳細は公式サイトのこちらのページをご覧ください

美術館に展示されている作品が本物であることは、その作品がたどってきた来歴によって証明されます。国立西洋美術館が所蔵するモネの作品群は、後述する「松方コレクション」を核としており、その入手経緯や記録が明確に残されています。そのため、美術史的にも価値が確立された本物の作品であることが保証されているのです。

言ってしまえば、国立西洋美術館は、これらの本物の作品を後世に伝え、広く公開するために設立された場所です。安心して、印象派の巨匠が残した光と色彩の世界をご堪能いただけます。

国立西洋美術館のモネ、常設展示は全て本物 「睡蓮」
画像出典:クロード・モネ「睡蓮」(1897-1899年頃、国立西洋美術館)。出典:Wikimedia Commons
国立西洋美術館のモネ、常設展示は全て本物 「陽を浴びるポプラ並木」
画像出典:クロード・モネ「陽を浴びるポプラ並木」(1891年、国立西洋美術館)。出典:Wikimedia Commons
国立西洋美術館のモネ、常設展示は全て本物 「並木道(サン=シメオン農場の道)」
画像出典:クロード・モネ「並木道(サン=シメオン農場の道)」(1864年、国立西洋美術館)。出典:Wikimedia Commons

所蔵の核、松方コレクションと国立西洋美術館

所蔵の核、松方コレクションと国立西洋美術館
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国立西洋美術館がなぜこれほど充実したモネのコレクションを所蔵しているのか、その答えは美術館の成り立ちそのものにあります。この美術館は、実業家であった松方幸次郎(1866-1950)が築いた美術品コレクション、通称「松方コレクション」を保存し、公開するために1959年に設立されました。

松方幸次郎は、川崎造船所(現・川崎重工業)の初代社長として日本の近代化に貢献する一方、1916年頃から約10年間にわたりヨーロッパで膨大な数の西洋美術品を収集しました。その目的は、日本の若い画家たちに本物の西洋美術を見る機会を提供するため、自らの手で美術館を設立することでした。

しかし、昭和初期の金融恐慌により松方の会社は経営危機に陥り、美術館設立の夢は頓挫します。コレクションの一部は散逸しましたが、フランスに残されていた約400点の作品は第二次世界大戦後、敵国資産としてフランス政府に接収されてしまいました。

戦後、吉田茂首相らの尽力により、これらの美術品は日仏友好の証として日本へ「寄贈返還」されることになります。そして、この返還されたコレクションを収蔵する専門の美術館として、国立西洋美術館が誕生したのです。つまり、同館のモネ作品は、美術館の礎そのものであると言えます。

実業家・松方幸次郎とモネの深い交流

実業家・松方幸次郎とモネの深い交流
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松方幸次郎の美術品収集にかける情熱は、画家本人との交流にも表れています。彼は作品を購入するため、フランスのジヴェルニーにあるモネの自宅兼アトリエへ何度も足を運びました。

伝えられるところによると、幸次郎はモネが愛飲していたナポレオンというワインを手土産に訪問を重ね、次第に深い信頼関係を築いていったとされています。ある時、幸次郎はアトリエに飾られていた18点の作品を譲ってほしいとモネに頼み込みました。それらはモネ自身が特に気に入っており、通常はコレクターに売らないと決めていた作品ばかりでした。

モネは当初、ためらいを見せましたが、幸次郎の「あなたの素晴らしい絵を、日本の貧しい画学生たちに見せてあげたいのです」という、私利私欲のない純粋な想いに心を動かされます。そして、手元に残しておきたかった大切な作品群を、幸次郎に託すことを決意したのです。このエピソードは、国立西洋美術館のコレクションが、単なる美術品の集積ではなく、二人の人間の信頼と情熱の結晶であることを物語っています。

国立西洋美術館の常設作品ラインナップ

国立西洋美術館では、松方コレクションを核とした以下の9点のモネ作品が常設展示されており、年代ごとの画風の変遷をたどることができます。特に『睡蓮』は、異なる時期に制作された2点が収蔵されており、比較鑑賞できるのが魅力です。(2025年7月現在)

作品名制作年
並木道(サン=シメオン農場の道)1864年
雪のアルジャントゥイユ1875年
しゃくやくの花園1887年
舟遊び1887年
陽を浴びるポプラ並木1891年
波立つプールヴィルの海1897年
睡蓮1897-1899年頃
黄色いアイリス1914-17年頃
睡蓮1916年

これらの作品は、モネの画業の初期から晩年に至るまでを網羅しており、彼の芸術的探求の軌跡を間近で感じることができます。例えば、初期の写実的な風景画から、光の効果を追求した印象派時代、そして最晩年の抽象表現に近づいていく『睡蓮』まで、その変化は一見の価値があります。

国立西洋美術館の入館料とアクセス情報

国立西洋美術館を訪れる際の基本情報をまとめました。快適な鑑賞のために、事前に開館時間や料金を確認しておくことをお勧めします。

利用案内

項目詳細
住所〒110-0007 東京都台東区上野公園7番7号
開館時間常設展・企画展
・9:30~17:30
・金曜・土曜日: 9:30~20:00
※入室は閉館の30分前まで
休館日・毎週月曜日(祝日・振替休日の場合は開館し、翌平日が休館)
・年末年始(12月28日~1月1日)
※その他、臨時休館の場合あり。公式サイトで最新情報をご確認ください。
無料観覧日・Kawasaki Free Sunday(原則毎月第2日曜日)
・国際博物館の日(5月18日)
・文化の日(11月3日)
※常設展のみ無料です。

常設展観覧料

対象個人団体(20名以上)
一般500円400円
大学生250円200円
  • 高校生以下および18歳未満、65歳以上の方は無料です。
  • 障害者手帳をお持ちの方とその付添者1名は無料になります。
  • 入館の際には、年齢のわかる学生証や身分証明書、各種手帳をご提示ください。
  • 団体での観覧は事前予約が必須です。
  • 企画展は別料金となりますが、企画展の観覧券で常設展もご覧いただけます。

アクセス

  • JR上野駅:「公園口」より徒歩1分
  • 京成電鉄 京成上野駅:より徒歩7分
  • 東京メトロ(銀座線・日比谷線)上野駅:より徒歩8分

美術館には専用駐車場がありませんので、公共交通機関の利用が便利です。お車の場合は、周辺の有料駐車場をご利用ください。

本物のモネは国立西洋美術館以外でも鑑賞できる

  • 日本全国!モネの作品が見られる美術館一覧
  • 東京でモネの作品が見られる美術館
  • 京都でモネの作品が見られる美術館
  • 大阪でモネの作品が見られる美術館
  • 名古屋でモネの作品が見られる美術館

日本全国!モネの作品が見られる美術館一覧

日本全国!モネの作品が見られる美術館一覧

前述の通り、国立西洋美術館は日本におけるモネ鑑賞の聖地とも言える場所ですが、彼の作品に出会えるのはそこだけではありません。実は、日本国内でクロード・モネの作品を所蔵している美術館は、少なくとも34館も存在します。この数字は、世界的に見ても特筆すべきものであり、いかに日本人がモネの芸術を愛し、積極的に受け入れてきたかを物語っています。

この背景には、いくつかの理由が考えられます。一つは、モネ自身が浮世絵をはじめとする日本美術に深く傾倒した「ジャポニスム」の代表的な画家であったことへの親近感です。また、光の移ろいや水面のきらめき、四季折々の自然風景といったモネが好んで描いたテーマは、古来より自然を繊細な感性で愛でてきた日本人の心と強く共鳴する部分があったのでしょう。そして、松方幸次郎のように、日本の近代化のために本物の西洋文化を伝えようとした実業家たちの情熱的な収集活動が、その礎を築きました。

ここでは、その代表的な美術館を地域ごとにご紹介します。お住まいの地域や旅の目的地で、思いがけず巨匠の名画に出会えるかもしれません。

地域都道府県主な所蔵美術館代表的な所蔵作品
東北山形県山形美術館『サン=ジェルマンの森の中で』
東北福島県福島県立美術館『ジヴェルニーの草原』
関東茨城県笠間日動美術館『ロンドン チャリング・クロス橋』
関東千葉県DIC川村記念美術館『睡蓮』
関東東京都国立西洋美術館『睡蓮』、『舟遊び』など
関東東京都アーティゾン美術館『睡蓮』、『黄昏、ヴェネツィア』など
関東東京都東京富士美術館『睡蓮』、『海辺の船』など
関東神奈川県ポーラ美術館『睡蓮の池』、『ルーアン大聖堂』など
中部静岡県上原美術館『雪中の家とコルサース山』
中部愛知県ヤマザキマザック美術館『アムステルダムの港』
中部愛知県メナード美術館『チャリング・クロス橋』
関西京都府アサヒグループ大山崎山荘美術館『睡蓮』連作
関西大阪府和泉市久保惣記念美術館『睡蓮』
中国岡山県大原美術館『積みわら』、『睡蓮』
中国広島県ひろしま美術館『セーヌ河の朝』
四国香川県地中美術館『睡蓮の池』など5点
四国愛媛県愛媛県美術館『アンティーブ岬』
九州福岡県北九州市立美術館『睡蓮、柳の反影』
九州鹿児島県鹿児島市立美術館『睡蓮』

このように、大都市だけでなく、全国各地にモネの珠玉の作品が収蔵されています。

※注意点 所蔵していても常時展示されているとは限らない

ただし、重要な注意点があります。それは、「所蔵していること」と「常に展示されていること」は必ずしもイコールではない、という点です。美術館の常設展は定期的に展示替えが行われるほか、作品が修復や他の美術館への貸し出しで館外に出ている場合もあります。

したがって、特定の作品を目当てに美術館を訪れる際は、事前に必ず各美術館の公式ウェブサイトで最新の展示情報を確認するか、電話で問い合わせることを強くお勧めします。この一手間が、あなたの美術鑑賞の旅をより確実で満足度の高いものにしてくれるでしょう。次の項目からは、この中でも特にコレクションが充実している主要都市の美術館を、さらに詳しく掘り下げていきます。

東京でモネの作品が見られる美術館

東京とその近郊には、この記事で特集している国立西洋美術館をはじめ、モネのコレクションを誇る美術館が複数存在します。それぞれが個性的な収集方針を持ち、異なる魅力を持つモネの作品を鑑賞できます。都心からアクセスしやすい場所も多く、気軽に印象派の世界に触れることが可能です。

美術館名特徴・代表的な所蔵作品所在地
国立西洋美術館松方コレクションを核とする9点を現在常設展示。『睡蓮』、『舟遊び』など。所蔵数としては19作品。東京都台東区上野
アーティゾン美術館石橋財団の質の高いコレクションの一部として、『睡蓮』など9点を所蔵。東京都中央区京橋
泉屋博古館東京住友コレクションの一部として『モンソー公園』、『サン=シメオン農場の道』などを所蔵。東京都港区六本木
松岡美術館創設者・松岡清次郎の個人コレクション。『サン=タドレスの断崖』など3点を所蔵。東京都港区白金台
ポーラ美術館国内屈指の19点を所蔵。『睡蓮の池』や『ルーアン大聖堂』は必見。神奈川県足柄下郡箱根町

※ポーラ美術館は神奈川県箱根町ですが、東京から日帰りでもアクセスしやすい代表的な美術館としてご紹介します。

ここに挙げた美術館は、それぞれが独自の魅力を持っています。例えば、アーティゾン美術館はJR東京駅からのアクセスも良く、近代美術の流れの中でモネを捉えることができます。ポーラ美術館は、国内最大級のコレクション数を誇り、豊かな自然に囲まれた美しい建築空間で心ゆくまで作品に浸れるのが特徴です。

これらの美術館では、モネの作品に加えて、同時代の印象派の画家たちの作品も充実していることが多く、比較しながら鑑賞することで、より深い理解が得られるでしょう。訪問前には、各館の公式サイトで企画展や常設展の展示内容を確認することをお勧めします。

京都でモネの作品が見られる美術館

古都・京都でも、モネの作品を静かな環境でじっくりと味わうことができます。自然や日本の伝統建築と融合した空間で鑑賞するモネは、また格別な体験となるでしょう。

美術館名特徴・代表的な所蔵作品所在地
アサヒグループ大山崎山荘美術館『睡蓮』連作などを、建築家・安藤忠雄設計の「地中の宝石箱」で展示。京都府乙訓郡大山崎町
福田美術館嵐山に位置し、日本画と共に『プールヴィルの崖、朝』などの西洋画も所蔵。京都府京都市右京区

中でもアサヒグループ大山崎山荘美術館は、コレクションの質の高さはもちろん、その展示空間も大きな魅力です。コンクリート打ち放しのモダンな円形展示室で、2メートル四方の大きな『睡蓮』と向き合う時間は、まさに没入体験と言えます。

大阪でモネの作品が見られる美術館

大阪府では、和泉市久保惣記念美術館がモネの『睡蓮』を所蔵しています。この美術館は、東洋の古美術品、特に国宝や重要文化財を数多く所蔵することで有名ですが、近代西洋絵画のコレクションも充実しています。

美術館名代表的な所蔵作品所在地
和泉市久保惣記念美術館睡蓮大阪府和泉市

浮世絵版画のコレクションと合わせて展示されることもあり、モネが影響を受けたとされる日本の美術と共に作品を鑑賞できる、またとない機会を提供しています。ジャポニスムの視点からモネの作品を捉え直すことができるのは、この美術館ならではの楽しみ方かもしれません。関西圏にお住まいの方は、一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

名古屋でモネの作品が見られる美術館

中部地方の中心都市である名古屋市近郊でも、モネの作品に出会うことができます。それぞれ特色ある美術館が、珠玉の一点を収蔵しています。

美術館名代表的な所蔵作品所在地
ヤマザキマザック美術館『アムステルダムの港』を常設展示。愛知県名古屋市東区
メナード美術館『チャリング・クロス橋』を所蔵。愛知県小牧市

ヤマザキマザック美術館では、アール・ヌーヴォーのガラス工芸や家具と共に、フランス絵画のコレクションが展示されており、19世紀末から20世紀初頭のヨーロッパの芸術的な雰囲気を総合的に楽しむことができます。メナード美術館も、国内外の幅広いジャンルの美術品を収集しており、その中の一つとしてモネの作品が輝きを放っています。 ただし、美術館によっては改修工事などで長期休館に入る場合があるため、訪問前には必ず公式サイトで開館状況を確認することが大切です。

国立西洋美術館で本物のモネを体感しよう

記事のポイントをまとめます。

  • 国立西洋美術館に常設されているモネの絵画は全て本物です
  • これらの作品は松方幸次郎が収集した「松方コレクション」が核となっています
  • 美術館はコレクションを保存・公開するために設立されました
  • 松方幸次郎はモネのアトリエを訪れ、直接作品を購入しました
  • 「日本の画学生のため」という松方の情熱がモネの心を動かしたと言われます
  • 常設作品は『睡蓮』2点を含む全9点です
  • 初期から晩年までのモネの画業の変遷をたどることができます
  • 常設展の一般料金は500円、大学生は250円です
  • 高校生以下、18歳未満、65歳以上は無料で鑑賞できます
  • 毎月第2日曜日の「Kawasaki Free Sunday」など無料観覧日があります
  • JR上野駅公園口から徒歩1分とアクセスが非常に便利です
  • 企画展の観覧券があれば常設展も鑑賞可能です
  • 日本にはモネを所蔵する美術館が30館以上存在します
  • 東京のポーラ美術館は国内最大級の19点を所蔵しています
  • 京都、大阪、名古屋など全国の主要都市でモネ作品に出会えます
  • 訪問前には各美術館の公式サイトで最新情報を確認しましょう
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