クロード・モネの代表作『睡蓮』。その幻想的な水面のきらめきや、浮かぶ花の儚い美しさに心を奪われた方も多いのではないでしょうか。「この絵画のモデルとなった睡蓮の池の本物は、一体どこにあるのだろう?」と、一度は考えたことがあるかもしれません。
この記事では、そんなあなたの疑問にお答えします。モネが愛した睡蓮の池のモデルは、彼が晩年を過ごした自宅の庭に実在します。その場所はフランス、パリ郊外のジヴェルニーの庭です。ここでは、睡蓮の池と日本の橋が織りなす美しい風景を実際に見ることができます。
さらに、この記事では本家フランスのモネの家への訪問を考えている方のために、ジヴェルニー モネの家 予約の方法やアクセスについても詳しく解説します。また、日本国内でモネの世界観に浸れる場所として、睡蓮の池をテーマにした日本の美術館や、SNSで話題の岐阜のモネの池の見頃やアクセス、そして高知県にある公式のモネの庭へのアクセス情報まで、網羅的にご紹介します。
- 本物の「モネの睡蓮の池」の所在地と、その詳細
- フランス「モネの家と庭園」の見どころやベストシーズン
- 日本でモネの世界観を体験できるスポット(岐阜・高知)の特徴
- 各スポットへのアクセス方法やチケット予約などの実用情報
モネの睡蓮の池のモデル、本物はフランスに実在

- モネの家はフランスのパリ郊外にある
- 美しいジヴェルニーの庭を訪ねて
- 睡蓮の池のモデルはモネの自宅の庭
- 睡蓮の池と日本の橋が織りなす風景
- ジヴェルニーのモネの家は予約がおすすめ
モネの家はフランスのパリ郊外にある

クロード・モネが描いた『睡蓮』の池、その本物の風景は、フランスのパリから西へ約75km離れたノルマンディー地方のジヴェルニーという村に存在します。パリのサン・ラザール駅から電車に乗れば約1時間で最寄り駅に着く、日帰りでも十分に訪れることが可能な場所です。
モネがこの地に移り住んだのは43歳の時でした。列車の車窓から見えたジヴェルニーののどかで美しい風景に心を奪われたのがきっかけだったと言われています。彼はここで土地と家を購入し、亡くなるまでの約43年間を過ごしながら、数々の傑作を生み出しました。
現在のジヴェルニーは、世界中からモネファンが訪れる人気の観光地でありながら、今なお静かで穏やかな田園風景が広がる美しい村です。パリの喧騒から離れて、画家が愛した穏やかな時間を体感できる、魅力あふれる場所となっています。
美しいジヴェルニーの庭を訪ねて
モネの家の敷地には、彼が情熱を注いで作り上げた2つの異なるスタイルの庭園が広がっています。これらは単なる庭ではなく、モネ自身が絵を描くためのモチーフとして、光や色彩を計算し尽くして設計した芸術作品です。
クロ・ノルマン(花の庭)

一つは、邸宅の目の前に広がる「クロ・ノルマン」と呼ばれる庭です。日本語では「ノルマンディーの農園」といった意味合いを持ちます。一見すると色とりどりの花が自由に咲き乱れているように見えますが、実はモネによって緻密に設計されています。春から秋にかけて、チューリップやアイリス、バラ、ヒマワリといった季節の花々が次々と咲き誇り、訪れるたびに異なる色彩のパレットを見せてくれます。
ウォーター・ガーデン(水の庭)

そしてもう一つが、有名な『睡蓮』の舞台となった「ウォーター・ガーデン(水の庭)」です。花の庭とは道路を挟んだ向かい側にあり、地下通路を通って向かいます。こちらはセーヌ川の支流から水を引き込んで造られた池が中心で、柳や竹林が静かな影を落とす、東洋的な雰囲気を持つ空間です。鮮やかな花の庭とは対照的に、緑と水が織りなす落ち着いた美しさを感じられます。
睡蓮の池のモデルはモネの自宅の庭
多くの人が憧れる『睡蓮』の連作。その絵画のモデルとなったのは、まさしくモネが暮らした自宅の庭にある「ウォーター・ガーデン」の池です。彼はジヴェルニーに移り住んでから約10年後、家の前の土地を買い足してこの池を造りました。
特筆すべきは、モネが単に庭師に任せるのではなく、自ら庭の設計に深く関わった点です。彼は園芸に関する知識が非常に豊富で、世界中から珍しい植物の種を取り寄せては、庭で育てることに情熱を燃やしました。池に浮かぶ睡蓮も、フランス原産のものだけでなく、エジプトや南米から輸入した熱帯性のものまで植えられていたと言われます。
この池は、モネにとって単なる癒やしの空間ではなく、光や大気の変化を捉えるための巨大なキャンバスそのものでした。彼は時間や天候によって刻一刻と表情を変える水面を、生涯をかけて追い求め続けたのです。
睡蓮の池と日本の橋が織りなす風景

「ウォーター・ガーデン」を象徴する風景といえば、池に架かる緑色の太鼓橋を思い浮かべる方が多いでしょう。この橋は「ル・ポン・ジャポネ(日本の橋)」と呼ばれ、モネの日本美術への深い関心を示しています。
19世紀後半のヨーロッパでは、日本の浮世絵などが大きな注目を集める「ジャポニスム」という現象が起きました。モネもその影響を強く受けた画家の一人で、葛飾北斎や歌川広重といった絵師の浮世絵を数多く収集していました。彼の邸宅内には、壁一面に浮世絵コレクションが飾られています。
この太鼓橋は、歌川広重の『名所江戸百景 亀戸天神境内』に描かれた橋から着想を得たと考えられています。池の周りに植えられた柳や藤、菖蒲なども含め、「ウォーター・ガーデン」はモネが西洋の自然観と日本の美意識を融合させて創り出した、独創的な芸術空間であると言えます。
ジヴェルニーのモネの家は予約がおすすめ
モネの家と庭園を訪れるには、いくつかの注意点があります。特にハイシーズンは世界中から観光客が訪れるため、事前の準備が快適な鑑賞の鍵となります。
開園期間と休園期間
まず最も大切なのは、開園期間です。モネの家と庭園は一年中開いているわけではなく、毎年11月初旬から翌年の3月末までは冬季休園となります。訪問を計画する際は、必ず公式サイトで最新の開園日(通常は4月1日~11月1日)を確認してください。
チケットの事前購入
ハイシーズンや週末はチケット購入窓口が長蛇の列になることも少なくありません。限られた旅行時間を有効に使うためにも、公式サイトから日時指定のEチケットを事前に購入しておくことを強くおすすめします。事前予約者専用の入口からスムーズに入場できるため、待ち時間を大幅に短縮可能です。
パリからのアクセス方法
パリからジヴェルニーへの主なアクセス方法は以下の通りです。
アクセス方法 | 所要時間(目安) | 費用(目安) | メリット | デメリット |
鉄道+バス | 約1時間半 | 往復約30ユーロ~ | 費用を抑えられる、個人のペースで動ける | 乗り換えが必要、バスの本数が少ない |
オプショナルツアー | 半日~1日 | 70ユーロ~ | 往復送迎付きで楽、ガイドの解説がある | 費用が高い、滞在時間が限られる |
レンタカー | 約1時間~1時間半 | 料金+高速代 | 自由度が高い、周辺観光も楽しめる | 運転に慣れが必要、駐車場の確保 |
鉄道を利用する場合、パリのサン・ラザール駅からヴェルノン(Vernon)駅まで行き、そこからジヴェルニー行きのシャトルバスに乗り換えます。バスは電車の到着時刻に合わせて運行していますが、本数が限られているため、事前に時刻表を確認しておきましょう。
日本で見るモネの世界、モデルとなった本物の池との違いは?
- 睡蓮の池は日本の美術館でも鑑賞可能
- 岐阜にある通称モネの池とは?
- 岐阜のモネの池の見頃とアクセス
- 高知県で再現された公式のモネの庭
- 高知にあるモネの庭へのアクセス方法
睡蓮の池は日本の美術館でも鑑賞可能

フランスまで行かなくても、クロード・モネが描いた『睡蓮』の傑作を日本国内で鑑賞することは可能です。彼の作品は日本の多くの美術館に所蔵されており、光の移ろいを見事に捉えた絵画の世界に浸ることができます。
代表的な所蔵館としては、東京・上野の国立西洋美術館が挙げられます。ここには様々な時代のモネの作品がコレクションされており、画風の変遷をたどることができます。また、箱根のポーラ美術館も印象派のコレクションが充実しており、美しい自然の中でモネの作品と出会えます。
特に『睡蓮』の連作を堪能したいのであれば、香川県の直島にある地中美術館はユニークな体験を提供します。建築家・安藤忠雄が設計した建物の中に、モネの晩年の大作『睡蓮』が自然光のもとで展示されており、パリのオランジュリー美術館を彷彿とさせる空間で作品と向き合うことが可能です。これらの美術館を訪れることで、本物の池を見るのとはまた違った角度から、モネの芸術の奥深さに触れられるでしょう。
岐阜にある通称モネの池とは?
近年、SNSなどを中心に「まるでモネの絵のようだ」と話題になり、一躍有名になった場所が岐阜県関市にあります。通称「モネの池」と呼ばれていますが、正式な名前はなく、地元では昔から「名もなき池」として知られてきました。
この池は、根道神社の境内にあり、もともとは1980年頃に灌漑用として整備された人工の貯水池です。特筆すべきは、その成り立ちにあります。1999年頃に近くのフラワーパークの経営者が除草作業を行い、睡蓮を植えたのが始まりでした。その後、地元の人たちが鯉を放流したところ、偶然にも現在の幻想的な風景が生まれたのです。
高賀山の伏流水が湧き出ているため池の透明度が非常に高く、水底までくっきりと見通せます。その澄んだ水の中を色とりどりの鯉が優雅に泳ぎ、水面に睡蓮の花が浮かぶ様子は、まさに印象派の絵画そのもの。計算されて作られた庭園とは異なる、偶然が生んだ奇跡の絶景と言えます。
岐阜のモネの池の見頃とアクセス
岐阜県の「モネの池」を訪れるなら、季節や時間帯によって異なる表情を楽しめる点を押さえておくと良いでしょう。
おすすめの見頃
睡蓮の花が最も美しく咲くのは、6月中旬から8月上旬にかけてです。特に、池周辺は紫陽花の名所としても知られており、6月下旬から7月上旬には、睡蓮と紫陽花の共演を楽しむことができます。また、秋には周囲の木々が紅葉し、その色が水面に映り込む様子も格別です。冬には雪景色となり、静寂に包まれた水墨画のような風情が漂います。光の差し込み方で水の色がエメラルドグリーンやブルーに見えるため、晴れた日の午前中が特に写真撮影にはおすすめです。
アクセスと注意点
「モネの池」へのアクセスは、公共交通機関が非常に不便なため、自動車の利用が基本となります。最寄りのインターチェンジは東海北陸自動車道の美濃ICで、そこから国道や県道を経由して約30分ほどです。無料の駐車場が整備されていますが、休日の日中などは混雑することもあります。
自然発生的に有名になった観光地であるため、フランスのモネの庭のように整備された施設ではありません。周辺に飲食店や大規模なトイレは少ないため、事前に準備をしてから訪れるのが賢明です。
高知県で再現された公式のモネの庭
日本国内で、より本格的にモネが創り上げた庭園の世界を体験したいのであれば、高知県安芸郡北川村にある「北川村『モネの庭』マルモッタン」が最適です。この庭園は、世界で唯一、フランスのジヴェルニーにあるモネの庭から「モネの庭」と名乗ることを公式に認められています。
この庭は、ジヴェルニーの庭の再現にとどまりません。庭園のスタッフが実際にフランスへ足を運び、現地の管理者から直接指導を受けるなど、モネの精神を受け継ぐことに力を注いでいます。庭は3つのエリアに分かれています。
- 花の庭: ジヴェルニーの「クロ・ノルマン」をモデルに、季節の草花が彩るエリアです。
- 水の庭: 『睡蓮』の池を再現しており、象徴的な太鼓橋も架けられています。特筆すべきは、本家フランスでは気候の問題で栽培が難しかった「青い睡蓮」を、高知の温暖な気候を活かして見事に咲かせている点です。
- ボルディゲラの庭: モネが地中海沿岸を描いた作品から着想を得ており、ヤシの木などが植えられた、世界でここにしかない独創的な庭です。
このように、単なる模倣ではなく、日本の自然と融合させながらモネの世界観を昇華させた、価値ある庭園となっています。
高知にあるモネの庭へのアクセス方法
高知県の「モネの庭」は、風光明媚な場所にありますが、アクセスにはやや時間がかかります。計画的に移動手段を検討することが大切です。
公共交通機関を利用する場合
高知駅から出発する場合、まずJR土讃線で後免(ごめん)駅へ向かいます。そこで土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線に乗り換え、終点の奈半利(なはり)駅で下車します。奈半利駅からは、北川村営バスに乗り、「モネの庭」停留所で降りると目の前です。全体の所要時間は乗り継ぎ時間にもよりますが、約2時間ほどを見ておくと良いでしょう。
自動車を利用する場合
高知市中心部からは、国道55号線を東へ室戸方面に進み、奈半利町から国道493号線に入ります。所要時間は約1時間半です。無料の広い駐車場が完備されているため、車でのアクセスは便利です。
営業時間と料金
営業時間は9:00から17:00までですが、こちらもジヴェルニー同様、冬季(12月1日~2月末日)はメンテナンスのため休園となります。料金やイベントなどの最新情報は、訪問前に公式サイトで確認することをおすすめします。園内にはカフェも併設されており、地元の食材を使った食事を楽しみながらゆっくりと過ごせます。
モネの睡蓮の池のモデル、本物を見に行こう
この記事では、クロード・モネが描いた『睡蓮』のモデルとなった池に関する情報を多角的に解説してきました。最後に、重要なポイントをまとめます。
- モネの『睡蓮』のモデルとなった本物の池はフランスのパリ郊外ジヴェルニーにある
- その池はモネが晩年を過ごした自宅の敷地内にある「ウォーター・ガーデン」
- モネ自らが設計し、日本の浮世絵の影響を受けた太鼓橋が架けられている
- 庭園は季節ごとに異なる花が咲き、一年を通して様々な表情を見せる
- ジヴェルニーのモネの家は4月から11月が開園期間で、冬は休園する
- 訪問の際は公式サイトでのチケット事前予約が待ち時間短縮のためにおすすめ
- パリのサン・ラザール駅から鉄道とバスを乗り継いでアクセスできる
- 日本国内でもモネの世界観に触れることができる
- 岐阜県関市にはSNSで話題になった通称「モネの池」が存在する
- 岐阜の池は偶然が生んだ景観で、透明度の高い水と鯉が特徴
- 高知県北川村にはフランス本家が公認した「モネの庭」がある
- 高知の庭では、本家では見られなかった青い睡蓮を鑑賞できる
- 日本各地の美術館でも『睡蓮』の絵画作品は所蔵されている
- 本物の池、再現された庭、そして絵画作品、それぞれに異なる魅力がある
- 各スポットを訪れる際は、見頃の季節やアクセス方法を事前に確認することが大切