「フェルメールの『真珠の耳飾りの少女』が次に日本へ来日するのはいつだろう?」と、心待ちにしている方も多いのではないでしょうか。過去のフェルメール展、特に2012年や2018年に開催された展覧会は大きな注目を集め、多くの美術ファンを魅了しました。しかし、現在「真珠の耳飾りの少女」はどこにあるのか、所蔵先の美術館であるマウリッツハイス美術館への訪問は予約必要か、そして最も気になる今後の来日予定について、正確な情報をお探しではありませんか。
先に結論として、今後、「真珠の耳飾りの少女」の日本への来日は可能性は極めて低いです。
この記事では、来日の可能性が極めて低い理由の他、作品の背景解説、象徴的な青いターバンの秘密、驚くべき値段の歴史、そして作品世界を描いた映画に至るまで、他のフェルメール作品の日本における展示史とあわせて、皆さんの疑問に詳しくお答えします。
- 「真珠の耳飾りの少女」の過去の来日履歴と今後の来日可能性
- 作品を所蔵するマウリッツハイス美術館の基本情報と鑑賞のポイント
- 「真珠の耳飾りの少女」の作品解説と知られざる歴史
- 日本で鑑賞できる他のフェルメール作品について
フェルメール「真珠の耳飾りの少女」の来日履歴と日本にある作品を紹介
- 2012年の来日は大きな話題に
- 過去の来日フェルメール展を振り返る
- 日本で見られるフェルメール作品はある?
- 2018年フェルメール展の展示作品
2012年の来日は大きな話題に

「真珠の耳飾りの少女」は、これまでに3度、日本の地を訪れています。多くの人々の記憶に新しいのは2012年の来日ですが、それ以前にも2度、日本の美術ファンを魅了してきました。
最初の来日は1984年の「マウリッツハイス王立美術館展」でした。この時、初めて日本の多くの鑑賞者の前にその姿を現し、フェルメールの類まれな表現力が知られるきっかけとなりました。
2度目は、日本のフェルメールブームの火付け役とも言われる2000年の「フェルメールとその時代」展です。大阪市立美術館で開催され、当時としては最多となる5点のフェルメール作品と共に来日し、大きな注目を集めました。
そして、3度目の来日が2012年の「マウリッツハイス美術館展」です。所蔵元であるマウリッツハイス美術館の大規模改修工事に伴う特別な機会であり、東京と神戸の会場は連日長蛇の列となりました。この展覧会が、現時点では「真珠の耳飾りの少女」を日本で見ることができた最後の機会となっています。
このように、過去には日本のファンを魅了してきた名画ですが、前述の通り、現在は門外不出の方針が取られています。
過去の来日フェルメール展を振り返る

「真珠の耳飾りの少女」の来日は大きな注目を集めますが、日本におけるフェルメール作品の展示史はそれ以前から続いています。記録を遡ると、日本で初めてフェルメール作品が展示されたのは1968年のことでした。なお、その時の作品は「ディアナとニンフたち」です。
当初、フェルメールはレンブラントなど他のオランダ絵画の巨匠たちと共に紹介される脇役的な存在でした。しかし、時代と共にその評価は高まり、2000年にはついに日本で初めての「フェルメール展」が開催されるに至ります。これを機に日本での人気は爆発し、フェルメール作品は毎年のように来日するようになりました。
以下に、2000年代以降の主要な来日展の一部をまとめます。
開催年 | 主な展覧会名 | 来日した主なフェルメール作品 |
2000年 | フェルメールとその時代 | 《真珠の耳飾りの少女》《地理学者》など5点 |
2004年 | 栄光のオランダ・フランドル絵画展 | 《絵画芸術》 |
2007年 | フェルメール《牛乳を注ぐ女》とオランダ風俗画展 | 《牛乳を注ぐ女》 |
2008年 | フェルメール展~光の天才画家とデルフトの巨匠たち~ | 《マルタとマリアの家のキリスト》など7点 |
2011年 | フェルメール《地理学者》とオランダ・フランドル絵画展 | 《地理学者》 |
2012年 | マウリッツハイス美術館展 | 《真珠の耳飾りの少女》《ディアナとニンフたち》 |
2018年 | フェルメール展 | 《牛乳を注ぐ女》《赤い帽子の娘》など最大9点 |
このように、2000年代以降、日本は世界でも有数のフェルメール作品の鑑賞機会に恵まれた国となりました。これらの展覧会を通じて、多くの人々がフェルメールの光と静謐の世界に魅了されていったのです。
日本で見られるフェルメール作品はある?

海外の展覧会に足を運ばなければフェルメール作品は見られないのでしょうか。実は、日本国内で常設展でフェルメールの作品を鑑賞できる場所が一つだけ存在します。
それは、東京・上野にある国立西洋美術館です。2015年、フェルメールの初期の作品とされる「聖プラクセディス」が、ある個人コレクターから美術館に寄託されました。これにより、日本にいながらいつでもフェルメール作品と対面できるという、美術ファンにとっては夢のような環境が実現したのです。
公式サイトでは2025年9月現在、「常設展」と表記されています。
「聖プラクセディス」は、他の有名な作品とは異なり、ローマの聖女を描いた宗教画です。フェルメールの真作かどうかについては長年議論がありましたが、近年の研究で彼の作品である可能性が非常に高いとされています。静かな室内の情景を描いた作品群とは一線を画す、若き日のフェルメールの異なる側面を垣間見ることができる貴重な一枚と言えるでしょう。
2018年フェルメール展の展示作品
2018年から2019年にかけて東京の上野の森美術館と大阪市立美術館で開催された「フェルメール展」は、日本の美術展史上、最大規模のフェルメール展として大きな話題を呼びました。
この展覧会では、現存するフェルメール作品37点(研究者により諸説あり)のうち、実に8点(会期途中の作品入れ替えを含めると合計9点)もの作品が一堂に会しました。これは、過去のどの展覧会をも上回る作品数であり、まさに奇跡的な企画でした。
来日した作品は以下の通りです。
- 牛乳を注ぐ女
- マルタとマリアの家のキリスト
- 手紙を書く婦人と召使い
- 手紙を書く女
- リュートを調弦する女
- 真珠の首飾りの女
- 赤い帽子の娘(日本初公開)
- ワイングラスを持つ娘(ぶどう酒のグラス)(日本初公開)
- 取り持ち女(会期末に追加展示)
特に「赤い帽子の娘」と「ワイングラスを持つ娘(ぶどう酒のグラス)」は日本初公開ということもあり、多くの注目を集めました。一度にこれだけ多くの作品を比較鑑賞できる機会は世界的にも稀であり、フェルメールの画業の変遷と、光の表現の探求を肌で感じられるまたとない機会となりました。


「真珠の耳飾りの少女」の来日はない?作品情報まとめ
- 今後の来日予定がない理由とは?
- 日本での展示が今後ない作品は他にもある
- 「真珠の耳飾りの少女」はどこの美術館にある?
- マウリッツハイス美術館は予約必要?
- 青いターバンが印象的な「真珠の耳飾りの少女」の解説
- 「真珠の耳飾りの少女」の値段は衝撃価格だった
- モデルの少女を描いた映画も有名
今後の来日予定がない理由とは?

多くのファンが心待ちにしている「真珠の耳飾りの少女」の再来日ですが、残念ながらその実現は極めて難しい状況です。
前述の通り、2012年の来日は、所蔵元であるマウリッツハイス美術館の大規模改修工事という特殊な事情によるものでした。2年にわたる工事を終えてリニューアルオープンした際、美術館は方針を大きく変更しました。
その方針とは、館の最も重要な看板作品である「真珠の耳飾りの少女」の貸し出しを、今後は原則として行わないというものです。これは、世界中からこの作品を目当てに訪れる鑑賞者をがっかりさせないための措置であり、美術館の宝を恒久的に守るという強い意志の表れです。したがって、特別な事情がない限り、この方針が覆る可能性は低いと考えられます。
日本での展示が今後ない作品は他にもある

前述の通り、マウリッツハイス美術館の方針変更により、「真珠の耳飾りの少女」が今後、日本で展示されることはなくなりました。この作品は、言わば「門外不出」の傑作の仲間入りを果たしたのです。
世界には、同様にその美術館から決して動かされることのない、極めて重要な作品がいくつか存在します。
門外不出とされる主な傑作の例
- レオナルド・ダ・ヴィンチ「モナ・リザ」(ルーヴル美術館)
- ディエゴ・ベラスケス「ラス・メニーナス」(プラド美術館)
- サンドロ・ボッティチェリ「ヴィーナスの誕生」(ウフィツィ美術館)
- パブロ・ピカソ「ゲルニカ」(ソフィア王妃芸術センター)
「真珠の耳飾りの少女」も、これらの作品と肩を並べる存在として、これからは故郷であるオランダのデン・ハーグで静かに来訪者を待ち続けることになります。日本の美術愛好家にとっては寂しいニュースですが、この傑作に会うためにはオランダへ旅をするという、特別な価値が生まれたとも言えるかもしれません。
「真珠の耳飾りの少女」はどこの美術館にある?

「真珠の耳飾りの少女」は、オランダ第3の都市デン・ハーグに位置する「マウリッツハイス美術館」に所蔵されています。
デン・ハーグは、国会議事堂や国際司法裁判所などが集まるオランダの政治の中心地です。マウリッツハイス美術館は、その国会議事堂に隣接するホフ池のほとりに佇む、17世紀のオランダ古典様式の美しい建物です。元々はマウリッツ伯爵の邸宅として建てられたもので、その豪華で気品ある内装も大きな見どころの一つです。
比較的小さな美術館ですが、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」や「デルフトの眺望」のほか、レンブラントの「テュルプ博士の解剖学講義」など、17世紀オランダ絵画の黄金時代の傑作が数多く収蔵されており、「ロイヤル・ピクチャー・ギャラリー」とも称される珠玉のコレクションを誇ります。
マウリッツハイス美術館は予約必要?
「真珠の耳飾りの少女」に会うためにマウリッツハイス美術館を訪れる際は、事前のチケット予約が強く推奨されます。予約なしでも入場できる場合がありますが、混雑時には長時間待つか、入場できない可能性もあるためです。
公式サイトからオンラインで日時指定のチケットを予約するのが最も確実な方法です。以下に、2025年9月現在の基本的な情報をまとめましたので、訪問を計画する際の参考にしてください。
項目 | 詳細 | 注意事項 |
開館時間 | 10:00~18:00 (月曜は13:00から) | 年中無休。最新情報は公式サイトをご確認ください。 |
チケット料金 | 大人:20ユーロ / 18歳以下:無料 | 料金は変更される可能性があります。 |
予約方法 | 公式サイトでのオンライン予約を推奨 | 日本語での案内もありますが、予約画面は英語またはオランダ語です。 |
支払い方法 | クレジットカード、デビットカード等 | 現金は使用できないため注意が必要です。 |
その他 | A4サイズ以上の鞄はロッカーに預ける必要あり | 写真撮影は可能ですが、フラッシュや自撮り棒の使用は禁止です。 |
特に観光シーズンの週末などは混雑が予想されるため、余裕を持った計画が大切です。公式サイトで最新の情報を確認し、快適な鑑賞を楽しんでください。
青いターバンが印象的!作品の解説
「真珠の耳飾りの少女」が人々を惹きつけてやまない理由の一つに、そのミステリアスな魅力が挙げられます。描かれている少女が誰なのか、どのような状況で描かれたのか、確かな記録は一切残っていません。
印象的な「青」の正体

少女が巻いているターバンの鮮やかな青は、この作品の大きな特徴です。この青は「ウルトラマリン」と呼ばれ、当時、金よりも高価だったと言われる希少な鉱物「ラピスラズリ」を原料としています。フェルメールがこの高価な顔料を惜しげもなく使用したことからも、この作品への特別な思い入れがうかがえます。
謎に満ちたディテール

この絵画には、多くの謎が含まれています。
- モデルは誰か: フェルメールの娘、あるいは召使いなど様々な説がありますが、特定の個人ではなく理想化された女性像を描いた「トローニー」と呼ばれるジャンルの作品であるという見方が有力です。
- 眉毛がない: 当時の美の基準で眉を剃っていた、あるいは元々描かれていたが経年により消えてしまったなど、諸説あります。
- 真珠の大きさ: 耳飾りの真珠は、その大きさから本物ではない可能性が指摘されています。ガラスや金属製の模造品を描いたのではないかと考えられています。
近年の調査では、肉眼では見えなくなっていた少女のまつ毛が描かれていたことや、真っ黒に見える背景が元々は深緑色のカーテンだったことなどが判明しました。350年以上の時を経て、少しずつその秘密が解き明かされつつあることも、この作品の魅力を一層深めています。
「真珠の耳飾りの少女」の値段は衝撃価格だった
今や天文学的な価値を持つとされる「真珠の耳飾りの少女」ですが、驚くべきことに、過去にはほとんど価値がないと見なされていた時代がありました。
フェルメールの死後、彼の作品の多くは散逸し、画家自身も美術史から忘れ去られた存在となっていました。この作品も例外ではなく、長い間、誰の作品かも分からぬまま人々の手を渡り歩いていたのです。
転機が訪れたのは1881年、ハーグのオークションに出品されたときでした。この時、作品は長年の汚れで真っ黒になっており、その価値に気づく者はほとんどいませんでした。結果として、あるコレクターによってわずか2ギルダー30セントという驚くほどの安値で落札されます。これは、現在の日本円に換算すると、わずか1万円程度だったと言われています。
落札後に丁寧に修復が行われ、汚れの下から輝くような少女の姿が現れたことで、この作品はフェルメールの傑作として再発見されました。もしこの時の落札がなければ、名画は永遠に失われていたかもしれません。作品がたどったドラマチックな運命も、その価値を一層高めていると言えるでしょう。
モデルの少女を描いた映画も有名
「真珠の耳飾りの少女」のミステリアスな魅力は、多くのクリエイターにインスピレーションを与えてきました。その中でも特に有名なのが、2003年に公開された同名の映画です。
この映画は、アメリカの作家トレイシー・シュヴァリエによる歴史小説を原作としています。フェルメールの家に仕えることになった若き召使いグリートが、画家の創作の秘密に触れ、やがて「真珠の耳飾りの少女」のモデルとなるまでを、繊細な映像美で描いています。
映画の魅力
- 豪華キャスト: 主人公グリートをスカーレット・ヨハンソン、フェルメールをコリン・ファースが演じ、その抑制された演技が高く評価されました。
- フェルメール絵画の再現: 窓から差し込む光の表現や構図、衣装など、まるでフェルメールの絵画がそのまま動き出したかのような世界観が忠実に再現されています。
- 創作の秘密に迫る物語: なぜこの絵が描かれたのか、という謎に対して、史実を基にしながらもフィクションならではの説得力ある物語を紡ぎ出しています。
この映画の成功は、「真珠の耳飾りの少女」を単なる美術品としてだけでなく、一つの物語を持つ存在として世界中の人々に認識させ、その人気をさらに高める大きなきっかけとなりました。
フェルメール「真珠の耳飾りの少女」来日の可能性
- 「真珠の耳飾りの少女」はオランダのデン・ハーグにあるマウリッツハイス美術館が所蔵している
- 2012年に「マウリッツハイス美術館展」で来日し、大きな話題を呼んだ
- この来日は、美術館の改修工事に伴う特別な機会だった
- 改修後、美術館は「真珠の耳飾りの少女」を原則貸し出さない方針を決定した
- そのため、今後の来日や日本での展示の可能性は極めて低い
- この作品は「モナ・リザ」などと同様に「門外不出」の作品の一つとなった
- 作品に会うには、オランダのマウリッツハイス美術館を訪れる必要がある
- 美術館訪問の際は、公式サイトでの日時指定チケットの事前予約が推奨される
- 日本でフェルメール作品を見るなら、国立西洋美術館に寄託されている「聖プラクセディス」がある
- 「真珠の耳飾りの少女」はモデルが不明なミステリアスな作品である
- 鮮やかな青いターバンは、高価な顔料ラピスラズリで描かれている
- 1881年には約1万円という驚きの安値で落札された過去を持つ
- スカーレット・ヨハンソン主演で映画化もされ、世界的な知名度を高めた
- 過去には日本でも大規模なフェルメール展が何度も開催されてきた
- 2018年の「フェルメール展」では最大9点の作品が集結した