こんにちは。「アートの地図帳」のさとまるです。
オーギュスト・ロダンの有名な群像彫刻「カレーの市民」について、どこにあるのか疑問に思ったことはありませんか。
実はこの歴史的傑作は世界中に複数存在しており、なぜ複数あるのか、そしてオリジナル12体とは何なのかと不思議に感じる方も多いようです。フランスの展示場所だけでなく、日本国内のどこで見れるのかも気になりますよね。
この記事では、東京の国立西洋美術館や静岡県立美術館での展示をはじめ、よく検索される箱根の彫刻の森美術館での展示の有無や、ポーラ美術館での所蔵情報についても詳しく解説していきます。
ロダンの革新的な造形美学や、作品が世界中に点在する背景を知ることで、実際に足を運んで鑑賞する際の感動がさらに深まるはずです。
- ロダンのカレーの市民が世界中に複数存在する理由
- オリジナルキャスト12体の歴史的な背景と秘密
- 国立西洋美術館や静岡県立美術館など日本の所蔵施設
- 箱根エリアにおける展示場所の正しい情報
ロダンの傑作「カレーの市民」はどこにあるのか
ロダンの代表作である『カレーの市民』は、特定の美術館に1つだけあるわけではありません。なぜ同じ作品が世界中に点在しているのか、その背景にある美術界のルールや、フランス本国での展示場所について詳しく見ていきましょう。
カレーの市民はなぜ複数あるのかその理由

美術館を巡っていると、「あれ?この彫刻、別の場所でも見た気がする」と思うことってありますよね。まさにロダンの『カレーの市民』がその代表格かもしれません。世界中に同じ作品が点在しているのには、彫刻ならではの明確な理由があります。
大理石を削って作る彫刻とは異なり、『カレーの市民』はブロンズ(青銅)で制作されています。ブロンズ彫刻は、粘土や石膏で作った原型から「鋳型(いがた)」をとり、そこにドロドロに溶けた金属を流し込んで作られます。つまり、鋳型さえあれば、理論上はいくつでも同じものを複製できるというわけですね。
そのため、ロダン自身が制作に関わった時代から、要望に応じて複数のキャスト(鋳造品)が作られ、各地へと旅立っていったのです。複製と聞くと価値が下がるように感じるかもしれませんが、これらはすべて美術史的に重要な意味を持つ作品なんですよ。
カレーの市民のオリジナル12体の秘密
いくらでも複製できるとはいえ、無制限に作られてしまっては作品の価値が保てません。そこで重要になるのが「オリジナル・キャスト」という概念です。
現在、世界に存在している『カレーの市民』の完成された群像のうち、「本物(オリジナル)」として公認されているのはわずか12体のみとなっています。これは厳格なルールに基づいて数が制限されているからです。
オリジナル12体の特徴
これらの12体は、どれも同等の美術史的価値を持つ「本物」として扱われます。第1作目が1895年に設置されて以降、20世紀という激動の時代を通じて少しずつ鋳造され、世界各地の重要な美術館や公共空間へと分散していきました。
つまり、「どこか一箇所にしかない唯一無二のもの」を探すのではなく、「世界に12人(12組)の兄弟がいる」と考えると、なんだかロマンを感じませんか。
以下に、12体の設置場所を表にしてみたのでご覧ください。
| 国(都市) | 特徴 |
| フランス(カレー) | 第1体目。 1895年に設置。物語の舞台となった地であり、当初は高い台座に乗せられていたが、現在はロダンの希望通り低く設置されている。 |
| デンマーク(コペンハーゲン) | 第2体目。 カール・ヤコブセンの依頼で製作。彫刻美術館「ニュー・カールスベア・グリプトテク」の庭園に展示。 |
| ベルギー(マリモール) | 第3体目。 マリモール王立美術館が所蔵。1905年に鋳造された初期の版。 |
| イギリス(ロンドン) | 第4体目。 1913年にイギリス政府が購入。ウェストミンスター宮殿(国会議事堂)隣のビクトリア・タワー・ガーデンに設置されている。 |
| アメリカ(フィラデルフィア) | 第5体目。 ロダン美術館(フィラデルフィア)所蔵。1925年に鋳造。 |
| フランス(パリ) | 第6体目。 パリ・ロダン美術館の庭園に展示。ロダンが生前最後に承認した鋳造とされる。 |
| スイス(バーゼル) | 第7体目。 バーゼル市立美術館所蔵。1943年に鋳造。 |
| アメリカ(ワシントンD.C.) | 第8体目。 ヒルシュホーン博物館と彫刻の庭(スミソニアン協会)が所蔵。 |
| 日本(東京) | 第9体目。 国立西洋美術館の前庭に展示。松方コレクションの一部として1953年に鋳造。国内唯一のオリジナル。 |
| アメリカ(パサデナ) | 第10体目。 ノートン・サイモン美術館所蔵。1968年に鋳造。 |
| アメリカ(ニューヨーク) | 第11体目。 メトロポリタン美術館所蔵。1985年に鋳造され、屋内に展示されている。 |
| 韓国(ソウル) | 第12体目。 サムスン美術館リウム(旧ロダン・ギャラリー)所蔵。12体限定の最後のオリジナル鋳造。 |
カレーの市民のフランスの展示場所とは
では、ロダンの母国であるフランスでは、どこに行けばこの傑作に会えるのでしょうか。主な展示場所は2箇所あります。
まずは、歴史の舞台となったフランス北部の港町、カレー市です。ここの市庁舎前広場には、記念すべき「第1作目」が設置されています。もともと1884年にカレー市長からの依頼で制作が始まったものであり、まさにこの場所こそが作品の原点と言えますね。

もうひとつは、芸術の都パリにある「ロダン美術館」の庭園です。こちらは第6作目にあたり、美しい緑の中で、苦悩する6人の市民の姿をじっくりと堪能することができます。パリを訪れた際は、ぜひ立ち寄りたいスポットです。

展示方法のこだわり
ロダンは当初、作品を高い台座に置くのではなく、鑑賞者と同じ目の高さの地面に直接置くことを強く希望していました。カレーの市民たちと私たちが直接「顔を合わせる」ことで、その苦悩を肌で感じてほしかったからです。現在のカレー市では、このロダンの意図を汲んで低い台座に移されています。
カレーの市民が複数存在する法的背景
さて、先ほど「オリジナルは12体だけ」とお話ししましたが、これにはしっかりとした法的な裏付けがあります。
フランスの法律では、美術品の希少性を守り、粗製乱造によるアーティストの尊厳の毀損を防ぐために、厳格な規定が設けられています。具体的には、ロダンのような作家の没後に鋳造されるブロンズ像について、「オリジナル(第一世代)」と認められる数は「最大12体(エディション)」までと制限されているんです。
実は、最後となる第12作目は1995年に韓国のソウルに向けて鋳造されました。つまり、法的な意味での「オリジナルの生産」はすでに終了しており、これ以降に作られたものはすべて「複製(レプリカ)」という扱いになります。美術市場のルールって、とても厳密にできているんですね。
日本国内でカレーの市民はどこにあるか解説
ここからは、私たちが住む日本国内に焦点を当ててみましょう。わざわざ海外に行かなくても、日本にはロダンの『カレーの市民』を鑑賞できる素晴らしい施設が複数存在します。群像から単体像、試作まで、それぞれの美術館が持つ特徴的な展示についてご紹介します。
カレーの市民は日本のどこで見れるのか

「日本でカレーの市民を見たい!」と思ったとき、選択肢はひとつではありません。完成された群像が見られる場所もあれば、制作途中のプロセスを感じられる場所もあります。
有名な所蔵先としては、東京・上野の「国立西洋美術館」、静岡県静岡市の「静岡県立美術館」、そして神奈川県箱根町の「ポーラ美術館」などが挙げられます。また、兵庫県の「神戸市立博物館」周辺でもパブリックアートとして親しまれている記録があります。
それぞれの施設で展示されている「バージョン」や「見え方」が全く異なるのが面白いところです。ご自身の見たいスタイルに合わせて訪れる場所を選んでみるのもおすすめかなと思います。
カレーの市民と国立西洋美術館での展示

日本で『カレーの市民』といえば、まずここを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。東京の上野にある国立西洋美術館です。
同館の前庭には、なんと世界で12体しかないオリジナル・キャストのうちの1つ(第9作目)が堂々と設置されています。1953年にフランスで鋳造され、松方コレクションの返還とともに日本へやってきました。日本の近代美術受容のシンボルとも言える存在ですね。
展示の高さに関する注意点
設置当初はロダンの意図を尊重して地面に近い低い台座に置かれていましたが、現在は作品保護などの理由から比較的高い土台の上に設置されています。そのため、下から見上げる形での鑑賞となりますが、それもまたルネサンス以降の記念碑的な迫力を感じさせてくれますよ。
同じ前庭には『地獄の門』や『考える人』も展示されているので、ロダン芸術の真髄を一度に味わえる贅沢な空間となっています。
カレーの市民と静岡県立美術館での魅力
群像としての圧倒的な迫力とはまた違った角度から作品を楽しめるのが、静岡県立美術館の「ロダン館」です。
ここの最大の特徴は、6人がひとかたまりになった完成作ではなく、6人の市民それぞれの「個別の単体像」を展示しているという点にあります。群像だとどうしても全体に目がいきがちですが、一人ひとりが独立して置かれていることで、ジャン・デールの厳しい表情やピエール・ド・ヴィッサンの苦悩など、ロダンの驚異的な解剖学的アプローチをじっくり比較観察できるんです。
さらに、同館には着想段階の「第一試作」も収蔵されています。ロダンがどのように思考を重ねてあの傑作に辿り着いたのか、そのプロセスを立体的に追体験できるのは、全国でもここだけの魅力ですね。
箱根の彫刻の森美術館でのカレーの市民展示はない
よくインターネットの検索などで「箱根 彫刻の森美術館 カレーの市民 展示」と調べられているのを見かけますが、実はこれ、よくある誤解なんです。
箱根彫刻の森美術館は日本有数の野外彫刻美術館であり、ロダンの他の作品も展示されているため、「カレーの市民もここにあるはず」と勘違いされやすいようです。しかし、実際に箱根エリアで『カレーの市民』に関連する貴重な作品を所蔵・展示しているのは、彫刻の森美術館ではなく、別の美術館になります。
足を運ばれる際は、目的地を間違えないように気をつけてくださいね。
カレーの市民はポーラ美術館にも所蔵
箱根エリアで『カレーの市民』に出会える正しい場所、それが自然豊かな環境に佇むポーラ美術館です。
こちらに収蔵されているのは、高さ72.0cmのブロンズ像である「第二試作」です。完成作の巨大な群像とは異なり、少し小さめのスケールで作られています。このサイズの利点は、なんといっても「全体像を見下ろして鑑賞しやすい」こと。緊密な6人のバランスや、ロダンが粘土を捏ねた生々しい指の跡(筆致)までをも間近に感じ取ることができるんです。
このポーラ美術館の作品は、1977年にフランスの名門シュス鋳造所で特別に12点のみ作られたシリーズの「12番目(最後)」の作品であることが台座に明確に刻印されています。とても貴重なコレクションなんですよ。
結論としてカレーの市民はどこにあるのか
ここまで見てきたように、「カレーの市民 どこにある」という疑問に対する答えは、「世界中に12体のオリジナルが存在し、日本国内でも様々な形で鑑賞できる」ということになります。
フランス本国だけでなく、東京の国立西洋美術館でオリジナルの群像を見上げ、静岡県立美術館で個々の市民の苦悩と向き合い、箱根のポーラ美術館でロダンの制作の息遣いを感じる。同じテーマの作品でも、展示されている場所や形態によって、全く異なる感動を与えてくれます。
ぜひ、今回ご紹介した情報を参考に、ご自身の足で各施設を訪れてみてください。きっと、写真や本で見るのとは違う、圧倒的な迫力と深い人間ドラマに心打たれるはずです。なお、各美術館の展示状況やアクセス方法などの正確な情報は、お出かけ前に必ず公式サイトをご確認ください。
